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2014.05.23 00:03
2014.05.23 00:01
「【小説】巨大新聞社の仮面を剥ぐ 呆れた幹部たちの生態<第2部>」第77回
大新聞2社の社長不倫問題、暴露記事掲載の写真週刊誌を名誉毀損で提訴
「ふむ。じゃあ、一つだけ、教えるか。大都と日亜の訴訟の件だけど、日亜は会社と村尾(倫郎・社長)だけじゃなく、愛人の女性記者、芳岡由利菜も個人で訴えたんだ。それでな、一応、自分にやれることはもう終わった、十分じゃないかってな」
「それじゃ、何の事だか、わかりませんよ。だって、会長は大都と日亜の腐敗した連中を追い出すために暴露作戦の黒幕になったんじゃないですか。それに僕らは協力したわけでしょ。訴訟になれば負けると言っていたのは吉須さんでしょう。それがどうしてもう十分なんですか」
「まあ、いいさ。最後に二人で銀座の『立ち飲みバー』で俺の言ったことを思い返してみれば、おおよそ想像つくと思うよ。とにかく、もう一度、手紙を出す。それを読んでくれ。完璧にわかるよ。じゃあな」
深井が二の句が見つからずにいると、吉須は「“さよなら”だけど、最後は“また逢う日まで”とでも言っておくか」と続けて、突然、電話を切ってしまった。深井はすぐにかけ直すこともできたが、やぶ蛇だと直感し、思いとどまった。
(文=大塚将司/作家・経済評論家)
【ご参考:第1部のあらすじ】業界第1位の大都新聞社は、ネット化を推進したことがあだとなり、紙媒体の発行部数が激減し、部数トップの座から滑り落ちかねない状況に陥った。そこで同社社長の松野弥介は、日頃から何かと世話をしている業界第3位の日亜新聞社社長・村尾倫郎に合併を持ちかけ、基本合意した。二人は両社の取締役編集局長、北川常夫(大都)、小山成雄(日亜)に詳細を詰めさせ、発表する段取りを決めた。1年後には断トツの部数トップの巨大新聞社が誕生するのは間違いないところになったわけだが、唯一の気がかり材料は“業界のドン”、太郎丸嘉一が君臨する業界第2位の国民新聞社の反撃だった。合併を目論む大都、日亜両社はジャーナリズムとは無縁な、堕落しきった連中が経営も編集も牛耳っており、御多分に洩れず、松野、村尾、北川、小山の4人ともスキャンダルを抱え、脛に傷持つ身だった。その秘密に一抹の不安があった。
※本文はフィクションです。実在する人物名、社名とは一切関係ありません。
※次回は、来週5月30日(金)掲載予定です。
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