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なぜ今、JA解体・農業改革議論が加速? 議論骨抜き懸念、企業参入促進に課題も

文=編集部
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JA全中を頂点とするピラミッド

 また、農協組織の見直しでは「中央会制度の廃止」を明記した。JA全中は農協法の規定に基づき、全国700の地域農協を指導する権限を持ち、地域農協から年間約80億円(2014年度は77億円)の負担金(賦課金)を集めている。改革案ではJA全中を頂点とするピラミッド型の組織を見直し、地域農協が特徴を生かした農業経営に取り組めるよう自立を促すとしている。

 JA全中は指導する権限とともに監査権も持っており、地域農協の自由な活動を縛ってきた、という批判がある。JA越前たけふ(福井県越前市)は12年からコメの直売に乗り出しているが、ほとんどの地域農協は全国農業協同組合連合会(JA全農)を通じてコメなど農産物を販売している。JA越前たけふのような直売が広がれば、全農は収入が減ることにもなる。

 このほかにも、JA全中は農業振興のシンクタンク(政府研究機関)などとして再出発させ、農産物の販売を担うJA全農は株式会社化し、収益の拡大策を目指すとなっている。

●最終目的はJAグループ解体?

 規制改革会議の改革案は、つまるところ「JAグループの解体」である。それゆえ全中の万歳章会長は規制改革会議で進められる農業改革の議論に対し、「組織の理念や組合員の意思、経営・事業の実態とはかけ離れた内容だ。JAグループの解体につながるものと受け止めざるを得ず、極めて大きな問題がある」と猛反発するコメントを出した。

 また、規制改革会議の議論に対する自民党農林族の動きについては、「支持」(読売新聞)、「反発必至」(毎日新聞)と正反対の報道がされており、態度を決めかねている様子がうかがえる。

 規制改革会議の農業作業部会座長は金丸恭文氏だ。同氏が社長兼会長を務めるフューチャーアーキテクトは情報システムのコンサルが主な事業で、食品スーパー魚栄商店を経営している。「国内農業が右肩下がりの状況では、現状維持こそ過激な考え方だ」と記者会見で述べ、全農の株式会社化について「スーパーに出資するなど販路を確保してはどうか。株式会社のほうが資金調達は容易だ」と語っている。

 安倍晋三首相は5月19日に開いた産業競争力会議で、農業強化に向けて強い意欲を示した。農家による加工販売事業への進出を支援する「官民ファンド」の拡充や、生乳の販売ルートの柔軟化を含めた改革案のとりまとめを林芳正・農相らに指示し、「今が農政転換のラストチャンス」と強調した。

 TPP交渉が大詰めを迎え、国内では農業改革への動きが加速しつつあるが、激しい国際競争にも耐えられる「強い農業」を実現するためにも、現実を踏まえた建設的議論が求められている。
(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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