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中国、高リスクの小口金融商品「余額宝」が低所得層に爆発的普及 高まるバブル崩壊懸念

文=上念司/経済評論家
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 余額宝の口座数はたった1年で1億アカウントを突破し、預金残高は5500億元(約9兆円)を超えている。これは、日本の常陽銀行(水戸市)や七十七銀行(仙台市)など上位地方銀行に匹敵する金額である。仮に1%の利ザヤを稼いでいるのであれば、年間の利益は900億円にもなる。

●余額宝のビジネスモデル

 このビジネスモデルのポイントは金利規制である。前述の通り、中国の商業銀行は当局の許可なしに預金金利を引き上げることはできない。また、預金の一部は金利が低い中央銀行の準備預金に強制的に預けさせられるため、預金者向けに無理な高金利を設定すれば逆ザヤになってしまう。このような制度上の問題に加え、昨年6月の上海短期金融市場における金利の暴騰というマクロ要因の存在も大きい。中国人民銀行による急激な金融引き締め策により上海の銀行間取引市場で金利が高騰し、一時13%というサラ金並みの状態に陥ったことは記憶に新しい。大きくは報道されなかったが、中国の4大銀行のATMで一時的に預金の引き出しができなくなるなどの異変がソーシャルネットワーキングサービス(SNS)を通じて日本でも知られることとなった。取り付け騒ぎ寸前といった状況であったことは間違いない。

 余額宝のサービスが始まったのは、ちょうどこの時期である。中国人民銀行が資金を出し渋る中、余額宝が民間商業銀行の資金不足を補うという点に目をつけたのがアリババのすごいところだ。昨年6月以降から年末にかけて資金不足の状況が続いたため金利が高騰し、銀行間で資金を融通し合う際の取引金利が5~6%を超える場合もあった。そのため、余額宝もこれに合わせて大口定期の金利を高めに設定することが可能であり、結果的にそれが小口の出資者にも高いリターンをもたらしたのである。

 しかし、このような状態は永遠に続くものではない。今年3月に入り、市場の資金需要が一服すると、余額宝の金利は急落した。もともと銀行間取引金利に連動した商品であるだけに、資金が余ってくれば即座に金利も下落する。しかし、前述の通り、それでも金利は4%台を維持しており、銀行の定期預金よりは魅力的だ。

 中国のインフレ率は、公式発表によると3%弱とされている。定期預金の金利はこれとほぼ同等なので、銀行に預けても実質的に資産は増えない。中国のインフレ率の統計は信頼性が低いので、中国国民が生活実感として感じているインフレ率はこれよりも高いことが想像される。そうなると、余額宝への熱い思いは、しばらく冷めることはないかもしれない。

 しかし、儲かるビジネスには必ず競合が現れる。アリババに遅れること4カ月、インターネット検索大手の百度(バイドゥ)は、子会社の百度金融理財を通じて理財商品「百賺」の販売を開始した。また、今年1月、中国版Twitterと呼ばれる「微博」を運営するテンセントはファンド会社4社と提携し、資産運用プラットフォーム「理財通」のサービスを始めた。さらに、これらネット預金の急増に対抗して、中国の国有4大銀行は、預金者がアリババなど民間口座に振り込める1日の上限金額を相次いで引き下げる措置を講じている。

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