これは、「週刊朝日」(朝日新聞出版/4月22日号)の大学合格出身校特集と、総務省統計局のデータを用い、北大入学者の出身校の所在地を調べたものだ。この調査では、出身校の所在地を「出身地」とみなした。この記事では、北大合格者2485人中、2467人の出身高の所在地が判明しており、合格者をほぼ網羅していることになる。信頼性は高い。
村田君によれば、今春の北大合格者の出身地は、地域別には北海道928人、関東615人、近畿307人、東海202人と続いた。地元に次いで、東京、大阪、名古屋という三大都市圏からの合格者が多い。多くの方の印象と同じだろう。
ところが、各地の受験生の人口には格差がある。これを考慮すると別の面が見えてくる。18才人口1万人当たりの合格者が多いのは、北海道193人、富山37人、奈良26人、東京24人と続く。図2をご覧いただければ、北大合格者が全国満遍なく分布していることがわかるだろう。特に目立つのは、秋田から鳥取にかけて日本海側からの入学者が多いことだ。東大や京大では、このような傾向はない。
なぜ、こんなことになるのだろうか。
北海道と北陸の縁
私は、村田君に「北海道の歴史を調べるように」と助言した。彼はウィキペディアから、歴史の本まで多くの資料に当たったようだ。
そこで彼が気づいたのが、北海道と北陸の縁だ。特に富山県との関係は深い。さらに彼が注目したのは、北前船である。北前船とは、江戸時代から明治時代にかけて、蝦夷地と大坂をつないだ廻船だ。商品を預かって運行するのではなく、船主自体が商品を買い、それを売買した。
日本海沿岸の各都市を寄港し、下関を回って大坂に入ったため、日本海・瀬戸内の沿岸の諸都市は繁栄した。1983年にNHKが放映し大ヒットしたドラマ『おしん』の舞台となった山形県酒田市など、その典型だ。酒田では地元の豪商本間家の繁栄ぶりが「本間様には及びもつかぬが、せめてなりたや殿様に」と評されたことが知られている。
北前船で取り扱われる代表的な商品が、蝦夷地の昆布やニシン、鮭などの海産物だった。寄港する各地で、高値で取引された。一方、大坂では米、塩、砂糖や衣類などを仕入れ、売買しながら蝦夷地へと向かった。蝦夷地から運ばれたニシンは魚肥として利用され、上方の綿花栽培を支え、木綿の衣服を全国に普及させた。また、昆布は日本の食文化を一変させた。