【同一労働同一賃金問題】4月~働き方改革で手当減額や非正規社員同一賃金で家計不況か
昨年10月の消費増税の影響が残るなか、2020年は波乱が続いています。年明け早々の中東問題は大事に至らなかったものの、新型肺炎の流行は止まらない状況になっています。感染者数のピークは4月頃、収束は7月以降という専門家の見方が多いことから、世界の景気の足を引っ張る可能性が高いと考えられます。
日本は欧米と比較して中国と距離が近く、また貿易や観光などで結びつきが強いことから、中国経済の停滞はストレートに景気に響くと思われます。GDP(国内総生産)成長率は消費増税後、2019年10~12月期から2四半期連続してマイナスになるとの予測が多かったですが、新型肺炎の流行により3四半期連続マイナスとの予測も出てきています。
景気動向の予測は専門家に譲るとして、家計においては「働き方改革不況」が忍び寄る可能性に注意を払う必要が出てきそうです。2019年4月から働き方改革に伴い、大企業の残業時間に上限が設けられました。その上限適用が2020年4月から中小企業にまで広げられます。
さらに働き方改革の第2弾として「同一労働同一賃金制度」がスタートします。同制度を簡単にいえば、同じ仕事であれば正社員も非正規社員も同一の賃金にしなければならないというものです。制度自体に異を唱えるつもりは毛頭ありませんが、正社員と非正規社員の賃金の違いとしては、各種手当とボーナスの有無があげられます。同一賃金にするために非正規社員に「住宅手当(家賃補助)」や「家族手当」を支給したり、手当相当額を賃金にプラスすればよいのですが、どうやら正社員の手当を削減する方向に動く企業が多いとみられています。さらに新型肺炎の流行により業績の下振れリスクが高くなったと考えられることから、2020年度の賃上げはかなり厳しくなると予想されます。
「働き方改革」に反対はしませんが、企業が賃金の抜本的な改革をせずに、就労時間などの改革だけを進めてしまったことに問題があります。新型肺炎の収束が想定以上に長引けば、景気の後退は避けられないかもしれません。新年度以降、家計運営は一段と厳しいものとなる可能性が出てきました。
昨年6月に「老後は2000万円必要」とする金融庁レポートが問題視されたこともあり、資産形成の機運が高まっていますが、その前にまず家計管理を見直し、健全化のための対策を行うべきでしょう。なぜなら近年、住宅ローンの完済年齢が70歳を超える人を数多く見かけるようになったからです。住宅ローン返済をボーナス併用払いにされている人は、60歳以降の再雇用後はボーナスが支払われることはほぼないと考えておくべきです。
(文=深野康彦/ファイナンシャルリサーチ代表、ファイナンシャルプランナー)