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一例としては、高松市高松丸亀町商店街における再開発が挙げられる(2006年竣工)。細分化された所有権に対し、定期借地権を用いながら利用権をまちづくり会社に集約し、再開発を進めた。地権者自身では再開発を進めることは困難で、いずれ商店街は衰退し、放置、放棄された可能性もあるが、それをまちづくり会社による利用の共同化で克服したと考えることができる。久高島における土地管理委員会と字会が、まちづくり会社に当たる。
また、農地では、所有権を残したまま遊休地を貸す農地バンク(農地中間管理機構)の仕組みで、利用が進められようとしている。さらに、遊休地に対して、一定の手続きの上で、都道府県知事が強制的に利用権を設定できる仕組みも設けられている。
一方、所有と利用を分離するものではないが、良好な居住環境を創出するため、使われなくなった土地の権利関係を積極的に調整している例もある。NPO法人つるおかランド・バンク(山形県鶴岡市)は、危険な空き家の除却を進め、跡地と隣地を組み合わせて区画整理を行い、狭隘道路の拡幅を実現する活動を行っている。所有者はNPOに低価格で売却し、隣地所有者は低価格で譲渡してもらう代わり、道路拡幅のため土地の一部を寄付する。こうしたスキームで、放っておけば活用可能性がなかった空き地の活用につなげている。
現代における総有的管理ともいえる所有と利用の分離や、所有権の円滑な移転は、それを推進する強力な主体を必要とする。放置、放棄され最終的に所有者不明になるような土地を出さず、より望ましい利用を実現するためには、それを進めるための主体が不可欠であり、所有権が強い日本でも取り組み次第では効果を発揮できることを示している。今後は、こうした取り組みをよりいっそう推進していくことが求められる。
(文=米山秀隆/富士通総研主席研究員)
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