「・特殊な条件(レンジ温め、金属容器、冷凍・チルド、極細等)がない商品に貼付する「普及型」の電子タグの単価(ICチップ+アンテナ+シール化等のタグの加工に関する費用)が1円以下になっていること。
・ソースタギング(メーカーが商品に電子タグを付けること)が実現し、商品のほぼ全てをRFIDで管理できる環境が整備されていること。」
ちなみに、同宣言に「主な課題」として以下のとおり示されているように、現在の電子タグの価格は1個10円以上する。これを25年までの約8年間で10分の1以下にしようというのだが、本当に実現できるのかかなりあやしい。
「(1)電子タグの単価が高い(10~20円程度)
(2)読み取り精度が未成熟(水や金属等が電波を遮断する)
(3)電子タグの商品への貼付け技術が未完成(タグを効率的に商品に貼り付ける技術がない)
(4)標準コードの普及(標準コード以外のコードの利用がある)」
店側のロスが膨大
しかし、同宣言の実現のためには、越えなければならないハードルが2つある。
一つは、食品表示を覆うような電子タグの貼付は、食品表示法違反になるので許されない、ということだ。たとえば、シールにして商品に貼付する際、罫線で囲われている名称、原材料、期限表示、保存方法、製造者、栄養成分表示等を電子タグで隠すことはできない。隠すことができる部分に貼るタグとなると、かなり小さな電子タグでなければならない。また、留保条件にあるように、ほぼすべての商品に電子タグが貼付されなければ省力化にならない。
では、全部をシールにするのではなく、タグの一部だけをシールにして貼付するとどうなるか。そうなると簡単に剝がれたり、外される可能性が高くなる。商品にぶら下がった状態のタグは、輸送中や品出し中、店舗内で客が触ったときなどに剝がれやすい。店舗内で、自然に剝がれたのか、万引きのために意図的に外されたのかをチェックすることは、店側はしたくないことだ。タグが剝がれた、あるいは外された商品をカゴに入れて読み取り台におけば、清算されることなく通過する。そうなれば、店側のロスが膨大になる。
そうかといって、絶対剝がれないような強力な接着剤を使うと、陳列した際にタグが引っかかり落下しやすくなる。客側にしても、購入後きれいに剝がせない不便さが生じる。
現在のバーコードは、包装紙自体に印刷されるか、食品表示用のラベルに印刷されているので、包装紙と一体化している。非常にスマートであり低コスト化も実現している。商品に包装紙以外の別物を貼付することは、見かけ以上に非実用的な部分が大きく、製造、輸送、販売側に、かなりの負担を強いることになる。形状や材質、さらに万引き対応も含めて使い勝手も考慮した電子タグを1円でつくるのは、かなり難しいだろう。