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黒田尚子「『足るを知る』のマネー学」

田舎でのんびり親・祖父母のサポート受けて子育て!急増する孫ターンの「意外な落とし穴」

文=黒田尚子/ファイナンシャルプランナー
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 地方移住のメリットとして、都心部に比べて、家賃・不動産、生活費などのコストが安いこと、新鮮な食材などおいしい食べ物・特産品に恵まれていること(しかも物々交換は日常)、いっぱいの自然に囲まれたスローライフが満喫できること、近場で気軽にアウトドアやレジャーが楽しめることなど、さまざまなものが考えられる。

 とくに、首都圏等に住む6歳以下の子どもを持つ子育て世帯が、地方への移住・転職・検討を希望している割合は4割以上。そのきっかけは「子育てのため」がダントツトップである(図表参照)。

 都市圏で、両親や祖父母など育児や家事をサポートしてくれる人もなく、孤独に子育てに奮闘している若い親世代が、自然に囲まれてのんびりと子育てをしたいと思う心情は、同じような子育てを経験した者としてよく理解できる。

田舎でのんびり親・祖父母のサポート受けて子育て!急増する孫ターンの「意外な落とし穴」の画像2*出所:NTTデータ経営研究所「子育て環境意向調査」(2016年1月26日~2016年1月29日)

「孫ターン」なら、移住による経済的負担もより軽減?

 一方、地方移住のデメリットとしては、就職先・働く場が少ないこと、公共交通機関が少なく移動手段のほとんどはクルマで、それに関するコスト等がかかること、医療機関や娯楽施設が少ないこと、冠婚葬祭の多さ・近所づきあいや人間関係の煩雑さなどがある。

 さらに、本コラムに掲載した『「地方移住でのんびり幸せ生活」の落とし穴…意外な出費多く、都会より生活コスト高も』でご紹介したとおり、必ずしも田舎暮らしのコストが割安になるわけではない。

 しかし、「孫ターン」の場合、かつて幼少期に夏休みやお正月などのたびに両親と帰省し、その土地の雰囲気や環境に馴染んでいる人も多いだろう。そのため、まったく見知らぬ土地に移住するよりは、心安いに違いない。

 また、祖父母が住んでいるだけに地元の人々の「よそ者」意識も薄い。「〇〇さんちのお孫さん」と周囲が認めてくれれば、信用や信頼関係も構築しやすいというものだ。

 さらに、地方移住の場合の家探しは、大きな心配の種のひとつ。これも、祖父母と同居すれば、その問題は解消できる。その上、家賃や生活費のコストも抑えられるというもの。多少、転職等で収入が減少したとしても、経済的にも余裕が生まれる可能性も高いだろう。

 このように孫ターンは、通常の地方移住のデメリット解消やハードルを下げてくれる妙策ともいえる。

黒田尚子/ファイナンシャル・プランナー

黒田尚子/ファイナンシャル・プランナー

 1969年富山県富山市生まれ。立命館大学法学部卒業後、1992年、株式会社日本総合研究所に入社。在職中に、FP資格を取得し、1997年同社退社。翌年、独立系FPとして転身を図る。2009年末に乳がん告知を受け、自らの体験から、がんなど病気に対する経済的備えの重要性を訴える活動を行うほか、老後・介護・消費者問題にも注力。聖路加国際病院のがん経験者向けプロジェクト「おさいふリング」のファシリテーター、NPO法人キャンサーネットジャパン・アドバイザリーボード(外部評価委員会)メンバー、NPO法人がんと暮らしを考える会理事なども務める。著書に「がんとお金の本」、「がんとわたしノート」(Bkc)、「がんとお金の真実(リアル)」(セールス手帖社)、「50代からのお金のはなし」(プレジデント社)、「入院・介護「はじめて」ガイド」(主婦の友社)(共同監修)など。近著は「親の介護とお金が心配です」(主婦の友社)(監修)(6月21日発売)
https://www.naoko-kuroda.com/

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