生前贈与、税務調査で「なかったこと」にされ多額相続税が発生の危険
生前贈与でもうひとつ注意してほしいポイント
また、毎年一定金額を贈与したいからといって、毎月一定期日に口座振替としたり、定期積立などの方法をとったりすることはお勧めできません。たとえば、これらの方法で毎年110万円を10年間贈与した場合、当初から1,100万円を贈与するつもりで、1,100万円を10年間分割で支払っただけ、と税務上判断されてしまう可能性があります。そのように判断されると、1年目で1,100万円を贈与したとみなされるため、基礎控除110万円の範囲を超える990万円に対して贈与税がかかってしまうので注意してください。
相続時精算課税贈与に注意
ところで、相続時精算課税という制度を利用すると、贈与の110万円の基礎控除枠を使えなくなるので注意が必要です。相続時精算課税とは、一定の年齢以上の子供や孫などに2,500万円までの財産を無税で一括贈与することができ、それを超える場合の贈与には一律20%の贈与税が課せられるという仕組み。
ただし、この制度を利用して贈与した財産は、最終的には相続したものとして相続税を計算し、その額を納付しなくてはなりません。どうしても今まとまった額を贈与しておきたい、という場合には便利な制度ですが、これを使ったら、使った人との間では110万円の基礎控除枠はなくなってしまう、ということをぜひ、頭の片隅に入れておいてください。
亮子「生前贈与であれば、相続人以外の方にも財産を渡すことができるし、自分のお金の使い方を自分で決められるから、ぜひ、利用を検討してほしいな」
啓子「そして、相続税対策にもなりますしね」
亮子「財産をあらかじめ自分の意思で分けておける、という点では、相続争いを防ぐ手段にもなりうるから、税金だけでなく、相続の対策にもなると思う」
啓子「うちは財産なんてないから相続も相続税も関係ない、と思っている方でも、実際にはどうなるかわかりませんよね。退職金や株の値上がりもありますし、最近だとビットコインで突然儲かったということだってあるかもしれない。相続になってから税金を減らすことはなかなか難しいので、まずは生前贈与を利用した相続税対策から検討してみてほしいと思います。もちろん、その他の相続税対策も説明する機会を持ちたいと思います」
(文=平林亮子/公認会計士、アールパートナーズ代表、徳光啓子/公認会計士)