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黒田尚子「『足るを知る』のマネー学」

至れり尽くせりの「財形貯蓄」をやらない理由がない…何もせず住宅購入の頭金が貯まる

文=黒田尚子/ファイナンシャルプランナー

 女性であれば、取り扱い業者によって金地金やジュエリーなどと交換できる「純金積立」、商品券や旅行券がもらえる「旅行積立」「デパート友の会積立」など、趣味と実益を兼ねた積立も人気だ。

 ただ、新社会人なら手軽にできて“貯蓄グセ”が身につき、安全確実に中長期の資産形成ができるような積立をおススメしたい。

 ということで、勤務先に「財形貯蓄制度(以下、財形)」がある場合、これを優先的に活用しよう。私が入社してすぐに始めたのもこれだった。

 財形とは、「勤労者財産形成貯蓄」の略称。勤労者財産形成促進法という法律に基づき、その名の通り、勤労者の貯蓄や持ち家取得の促進を目的として、勤労者が事業主の協力を得て給料から天引きで行う貯蓄のことである。

 前述の積立商品は、銀行の口座残高が不足する場合など積み立てられない可能性もあるが、財形なら給料が支払われている限り、強制的に積み立てられる。対象は勤労者なので、基本的には正社員だけでなく、非正規従業員や再雇用者なども利用可能だ(会社によって異なる)。

 財形には、「一般財形」「財形住宅」「財形年金」の3種類があり、勤労者側のおもなメリットは以下の通り。

・財形住宅と財形年金あわせて元利合計550万円(※)から生じる利子等が非課税になる。
・財形貯蓄の残高に応じた長期・低利な「財形持家転貸融資」が利用できる。
・財形年金は、年金の支払い終了まで非課税措置が継続される。

※財形年金のうち、郵便貯金、生命保険または損害保険の保険料、生命共済の共済掛金、簡易保険の掛金等に係るものについては払込ベースで385万円

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 そこで問題は、3つのうちどれを選ぶかだ。入社当時、金融知識などほとんどなく、「住宅を購入するかわからないし、年金なんてまだまだ先」と考えた私は、一般財形を選んだ。

 一般財形には、3年以上の期間にわたって、定期的に預け入れすることという要件がある。財形の手続き書類を記入していると、同期から「え? 黒田さん、3年もこの会社にいるの?」と言われて、みんなそんなにすぐ辞めるつもりなのかと、ちょっとびっくりした。

黒田尚子/ファイナンシャル・プランナー

黒田尚子/ファイナンシャル・プランナー

 1969年富山県富山市生まれ。立命館大学法学部卒業後、1992年、株式会社日本総合研究所に入社。在職中に、FP資格を取得し、1997年同社退社。翌年、独立系FPとして転身を図る。2009年末に乳がん告知を受け、自らの体験から、がんなど病気に対する経済的備えの重要性を訴える活動を行うほか、老後・介護・消費者問題にも注力。聖路加国際病院のがん経験者向けプロジェクト「おさいふリング」のファシリテーター、NPO法人キャンサーネットジャパン・アドバイザリーボード(外部評価委員会)メンバー、NPO法人がんと暮らしを考える会理事なども務める。著書に「がんとお金の本」、「がんとわたしノート」(Bkc)、「がんとお金の真実(リアル)」(セールス手帖社)、「50代からのお金のはなし」(プレジデント社)、「入院・介護「はじめて」ガイド」(主婦の友社)(共同監修)など。近著は「親の介護とお金が心配です」(主婦の友社)(監修)(6月21日発売)
https://www.naoko-kuroda.com/

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