取得価格の半分前後の自己資金を用意
ただ、年収はさほどではないので、多額のローンを組むと返済がたいへんなことになりますし、そもそも金融機関もそんなに融資してくれません。
ですから、なんといっても自己資金を増やす必要があります。国土交通省の調査では、新築マンションの取得者は1796万円の自己資金を用意して、4192万円のマンションを買っています。自己資金割合は42.8%です。これだけ高くなれば、それなりの自己資金を用意しなければならないのですが、中古住宅はそれより安いといっても、年収が低い分、一定の自己資金が欠かせません。
たとえば、中古戸建住宅取得者は1318万円の自己資金を用意して2857万円の住宅を取得しています。自己資金比率は46.1%です。さらに、中古マンションでは、この自己資金比率が51.3%と半分を超えています。自己資金が比較的潤沢と考えられる二次取得者を除いた一次取得者だけでみても、中古戸建住宅の自己資金比率は37.8%で、中古マンションは44.3%に達しています。
ローンの返済負担率20%以下で買っている
自己資金比率が高く、借入比率がそれほど高くないため、年間の住宅ローン負担もさほどではありません。
図表4にあるように、新築の分譲戸建住宅取得者の年間返済額の平均は119.2万円で、その年間返済額が年収の何%に相当するかを示す返済負担率は29.2%に達していますが、中古戸建住宅の場合には、年間110.0万円の返済額で、返済負担率は17.7%です。さらに、中古マンションでは返済負担率が15.6%まで下がります。
一般に返済負担率は25%までに抑えるのが無難といわれていますから、中古戸建住宅や中古マンション取得者は、十分な安全圏ということができます。それに対して、分譲戸建住宅を買った人たちは、かなり無理して買っていることになります。将来、ローン破たんなどに陥らないように十分に注意する必要がありそうです。
諦める前に自己資金を増やす努力を
もちろん、実際に中古住宅を買っている人たちのようなゆとりある返済計画を実現するためには、先にみたように一定の自己資金を用意、借入比率を落として自己資金比率を高める必要があります。それが50代、60代でも安心して中古住宅を取得するための必須条件といってもいいかもしれません。
逆にいえば、それなりの自己資金のメドが立つ人であれば、50代、60代でも決して遅くないということです。
まだ自己資金が十分ではないという場合、さほど年月は残されていませんから、短期間のうちに自己資金を増やさなければなりません。決して簡単ではないかもしれませんが、波に乗り損ねたと諦めるのではなく、もう一度波をたぐり寄せる努力をしてみてはどうでしょうか。
(文=山下和之/住宅ジャーナリスト)