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書類作成の経緯として、Aさんは銀行から融資を受けて不動産を購入していました。ある日、B銀行のバンカーと話をしたところ、借り換えにより返済額を減らせることを知ります。きっと金利の関係で、そのほうが得になると判断したのでしょう。AさんはB銀行のバンカーを自宅に招き、新たな融資のために「金銭消費貸借契約証書」を作成、連帯保証人4名にも署名捺印してもらい2万円を預け、印紙の貼付を依頼しました。これで書類の作成は完了です。
しかし、その後に、B銀行より有利な条件で借り換えが可能であるC銀行を見つけ、そちらと契約することにしました。B銀行からの借り入れを中止することにしたAさんはB銀行のバンカーに連絡し契約を破棄、融資は実行されませんでした。そこで、以前作成した「金銭消費貸借契約証書」を使用する見込みがなくなったとして還付を求めたわけです。
確かに、契約はしたけれど融資はされなかったので、使用する見込みがなくなったと考える人もいるかもしれません。ただ、一度契約は結ばれ、契約内容が実行されなかったにすぎません。印紙税法では、印紙税の納税義務は「課税文書の作成の時に成立する」とされています。また、印紙税法には非課税文書の規定もありますが、今回の「金銭消費貸借契約証書」が非課税文書に該当しないことは明らかでした。また、この証書の作成日は、証書に署名押印をしてB銀行に差し入れた日であるので、融資が実行されなくなっても印紙税は還付されないのです。
それでもAさんは、「使用する見込みがなくなった場合」に該当すると主張しました。しかし、契約を成立させることについて合意があり、文書に署名押印をした上、これをB銀行に差し入れて「行使」しているのであるから、「使用する見込みのなくなった場合」、より正確に言うと「損傷、汚染、書損その他の理由により使用する見込みのなくなった場合」には該当せず、Aさんの主張は正当性がありません。
結果、国税側の処分が認められることになりました。
不測の事態で契約内容を実行せずとも、一度契約書を作成したら、使用した印紙は無駄になってしまう、つまり印紙代は返ってきません。そんな事案でした。
(文=さんきゅう倉田/元国税局職員、お笑い芸人)
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