暴落への有力な材料
今後、アメリカの対中敵対政策は共産党政権の崩壊まで続く、と考えるのが妥当だろう。それは日本を叩きのめし、ソ連を崩壊させたアメリカの外交政策の歴史から見ても妥当な結論だ。
トランプ政権が終わり、別の大統領になったとしても、アメリカの「対中敵対」という基本的な外交政策は変わらないはずだ。それは冷戦期において大統領が共和党であろうと民主党に変わろうとも「対ソ封じ込め」という政策が一貫していたことからも、容易に推測できる。
さて、このアメリカの対中政策の変更が、日本の不動産市場にとってどのような影響があるのかを考えたい。
それは、恐ろしいことだと思う。
アメリカの対中政策の最終目標は、中国が西側のルールに従う国になって、アメリカの覇権に挑戦しなくなることである。そのためには、中国のもつ経済力を削ぐことも有力な手段だ。だから貿易戦争を仕掛けている。
一方、中国を見るといかにも危うい。まず、世界をリードするような産業分野がない。韓国でさえアンドロイドOSのスマートフォン端末世界シェアNo.1のサムスンがあるが、中国にはモノマネはあっても独自技術を打ち立てている有力企業が見当たらない。日本の新幹線の10倍の延長距離で敷設されている高速鉄道でさえ、その基幹的な技術は日本から導入するか盗んだものだ。したがって、中国は貿易を制限されるとたちまち経済が干上がってしまう。そして現在、アメリカはそれを仕掛けつつある。
これは恐ろしいことだ。世界第2位の規模を誇る経済大国が、経済的に窒息しようとしている。そうでなくても、中国の経済はインフラの拡大という投資で成長エンジンを回転させてきた。国内の個人消費や企業の設備投資という健全な需要が育ち切っていない。
資本主義国の常識で考えると、中国経済のバブルは近々崩壊するだろう。これまでは巨額の外貨が流入することで国内経済を活性化してきたが、アメリカとの貿易戦争でその流れが目に見えて細ってしまうからだ。そうなると、日本だけでなく世界経済には恐ろしいマイナスの影響をもたらす。場合によってはリーマンショックの数百倍の規模で、世界経済に不況の波を呼び寄せる。そこから脱却するには、それこそ10年単位の時間が必要かもしれない。
当然、日本の不動産には恐ろしいほどの下落圧力がかかる。2013年以降、日本の不動産は局地バブル状態である。都心や城南エリア、一部の地方で本来の実力以上の価格で売買されてきた。その結果、多くの人が「いずれは暴落する」という予感を薄々抱いている。だから、メディアなどで「暴落」をテーマにしたリリースが出ると、注目度が高くなる。
多くの人が「いつか暴落する」と考えているなかで、暴落への有力な材料が目の前に突きつけられればどうなるのか。それはもう、火を見るよりも明らかだ。
(文=榊淳司/榊マンション市場研究所主宰、住宅ジャーナリスト)