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さんきゅう倉田「税務調査の与太話」

税務調査の翌年に突然「マルサ」が来た!架空の外注費計上がバレて懲役刑?

文=さんきゅう倉田/元国税局職員、お笑い芸人

 2つの可能性があります。上記法人が単純に無申告か、あるいはAがペーパーカンパニーを使って架空外注費を計上しているかのいずれかです。Aの主要取引先のうち上位5社を調べたところ、すべて無申告でした。これは、相当に怪しい。

 その後、Aの銀行口座から、外注費の支払先の銀行口座を追い、それらの口座を復元して、怪しい金の動きがないかを調べます。入出金が、逆L型や稲妻型であれば、不正を疑います。

 のちに実施班が強制調査に着手したときに明らかになりますが、主要外注先の預金口座は、反社会的勢力から購入したもので、一口30万円だったそうです。登記されていない法人名義では銀行口座は開けないので、廃業・休眠中の法人から口座を買い取り、それを転売していたのでしょう。現在では、銀行口座を買った人も売った人も罪に問われます。お金になるからと、安易に口座を譲ってはいけません。

 調査の結果、Aの代表者は、売り上げが増大したために緊急に利益を圧縮しようと考え、知人を通じて銀行口座の購入方法を知り、売人に連絡をしたそうです。

 その方法は、電話をし、価格を伝えられ、後日、都内の公園で待ち合わせて金と通帳・印鑑・キャッシュカードを交換するというものでした。

 もちろん、口座を販売した業者の情報もAの代表者から聞き取りましたが、「知らぬ存ぜぬ」の一点張りで、資料情報として収集することは叶わなかったようです。

 経費を水増しするために、領収証を販売する業者を利用することは、昔からありました。懲役刑に問われる可能性もある銀行口座の売買に手を染めるのは、かなりリスキーです。Aの代表者は、よく考えず脱税の意思のみで口座を買ったものと思われます。

 金のために罪を犯せば、将来的に資産は減ってしまいます。リスクを取るときは、費用対効果や目先の利益ではなく、長期的な収益で判断する必要があります。
(文=さんきゅう倉田/元国税局職員、お笑い芸人)

さんきゅう倉田/元国税局職員、お笑い芸人

さんきゅう倉田/元国税局職員、お笑い芸人

大学卒業後、国税専門官試験を受けて合格し国税庁職員として東京国税局に入庁。法人税の調査などを行った。退職後、NSC東京校に入学し、現在お笑い芸人として活躍中。著書に『元国税局芸人が教える 読めば必ず得する税金の話』(総合法令出版)、『お金持ちがしない42のこと』(Kindle版)がある。
さんきゅう倉田公式ホームページ

Twitter:@thankyoukurata

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