平成時代が幕を閉じ、令和時代がスタートしました。平成時代は「失われた20年」などと揶揄されましたが、令和時代では失われたものを取り戻してほしいものです。
取り戻してほしいものはたくさんありますが、そのひとつに「金利」があります。平成時代は金利の上昇でスタート、平成3年にピークを付け、その後低下が続き、とうとう金利は失われてしまったのですから。
「低金利」「超低金利時代」といわれて久しいですが、筆者は低金利が始まったのは平成7年(1995年)と考えています。同年の9月8日、日本銀行の政策金利である公定歩合(現在は「無担保コール翌日物金利)」が初めて1%を下回り0.5%になったからです。以後、日銀の政策金利は1%以上になったことはなく、平成時代の約8割は低金利時代、終盤の数年間は金利がほぼなくなった時代だったわけです。
金利がなくなったことにより、預貯金金利は壊滅状態、半面では住宅ローンは天国のような低金利が続いています。この状態はいったいいつまで続くのか? と問われれば、少なくとも数年間は変わらないと推測されます。日銀が目標とする2.0%の物価上昇を達成する見込みがないからです。日銀が見直しを含めて年4回公表している「展望レポート」によれば、2021年度も目標に達成しないからです。
預金金利は壊滅状態が続く一方、住宅ローン金利はわが世の春を謳歌できる低金利がまだまだ続くことになるわけです。ただ、預貯金金利が動くことはほとんどありませんが、住宅ローン金利に関しては多少の上下はあることをお忘れなく。
問題は、金利は本格的に上がるのか? に尽きますが、低金利は日本だけの問題ではなくなっています。金利がある欧米諸国においても、その水準は十数年前より低下しているのです。言い換えれば、金利は上昇しているが、その山は十数年前と比較してかなり低いということになるのです。
転じてわが国に照らし合わせれば、21世紀に入って日本銀行は2回(ゼロ金利政策の解除を含めれば3回)政策金利を引き上げています。引き上げたといっても政策金利はわずか0.5%にすぎず、0.75%が視野に入りつつあるところでサブプライムショックになり、金利は再び引き下げられてしまったのです。ちなみに10年国債(新窓販国債)は、2006年に唯一2.0%台の表面利率で発行が行われました。
令和時代に入り、まずは政策金利がプラスになることが先決ですが、経済成長率や消費者物価指数の上昇率などを見る限り、それは当面先といわざるを得ないでしょう。教科書通りの景気拡張を背景とした金利の状態は期待薄、強いていえば突発的なことで金利が上昇する悪い金利の上昇(長期金利などの市場金利)があるかもしれないということです。
突発的なことといえば、わが国の財政破綻を想起するかもしれませんが、それが現実に起こることは考えられません。IMF(国際通貨基金)の2018年10月のレポートでも、わが国の財政は危機的なレベルではないと示されています。
令和時代、私たちは金利の復活を拝めるのでしょうか?
(文=深野康彦/ファイナンシャルリサーチ代表、ファイナンシャルプランナー)