第3は、店舗の稼働率向上を狙うものである。定額制サービスの供給者は、サービスを提供する加盟店を集め、消費者は定額でその店舗を一定回数、利用できるというようなかたちである。飲食店や美容室などでこのタイプがある。店舗にとっては通常のサービスよりは割安な供給になるが、このサービスに加盟すれば店舗の稼働率を上げることができる。
消費者にとっては、割安な料金でそのときどきで好きな店や都合の良い場所にある店を利用できることになる。この仕組みでは、定額制サービスの供給者は、消費者のこうした需要と、稼働率に余裕がある店舗とのマッチングを行うかたちになる。これは先に述べた第2のタイプの発展したかたちと基本的に同じになる。
第4は、消費者の来店を促すため、基礎的サービス部分を定額とするというものである。消費者が来店時に派生消費を行えば、供給者にとっては採算に合うことになる。例えば、コーヒーショップでのコーヒーの定額制、うどん店でのすうどんの定額制がこれに当たる。コーヒーショップではサンドイッチなど他の商品を購入すれば、うどん店ではすうどんに具材をトッピングするなどすれば、店側にとっては利益を確保できることになる。
住居、宿泊サービスの定額制
最近出てきた不動産分野の定額制は、主に2つある。ひとつ目は、住居や仕事場として各地で利用できる施設を供給するというものである。IT系の職種など仕事場を選ばない人や、多拠点居住を志向する人などの利用が見込めればビジネスとして成り立つ。もっとも、そのような個人を会員として多く集めることには一定の限界があるとも考えられるが、法人会員を確保できれば、需要を補うことができる。そのような戦略で参入したのは、株式会社アドレス(東京都千代田区)である(2019年4月サービス開始、当初の利用可能施設は11カ所)。空き家を改修するなどして、今後、施設を増やしていく方針という。
前述の第2のタイプの定額制では、供給者は初期時点で高級時計なら高級時計で多くの銘柄を揃えなければならない投資負担を負うが、不動産分野のこのタイプの定額制も同じ負担を負う。投資に見合った顧客を常に確保できるかどうかが、ビジネスとして成り立つかどうかの分かれ目になる。その点、高級時計やブランドバックでは、前述のように消費者が持て余しているものを借り受け、それを定額制サービスで供給するかたちも出ており、これは投資負担を軽減するものとして注目される。