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家賃収入や基地局設置で年収7千万円「不動産投資は最強」説…安定した不労所得の盲点

取材・文=文月/A4studio、協力=頼藤太希
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※写真はイメージ画像(「gettyimages」より)

 不動産投資に成功し、不労所得を得ているという話はよく聞かれる。3月には、所有するビルの家賃収入や携帯キャリアの基地局設置、広告看板などの副収入が年間7000万円を超えるというインターネット上への投稿が話題になり、「やっぱり不動産を持つのが最強」という反応もみられた。

 老後の年金不足などに備え、本業とは別の収入源を確保しようと投資を始める人も多いだろう。なかでも不動産投資は成功すれば、不労所得を安定的に確保できるため、何もせずとも定期収入があると憧れを抱く投資ビギナーもいるに違いない。不動産投資は元本の保証はないものの、投資資金が一瞬にして無駄になるリスクも比較的少ないミドルリスク・ミドルリターン投資。初期費用は決して低くないし、物件の維持コストや空室率が高いとインカムゲインが不安定になり、回収スケジュールが崩れるなどデメリットはあるものの、中長期的な収入を得る手段としてはメジャーな投資であろう。

 そこで今回は、株式会社Money&You代表取締役であり、経済ジャーナリストの頼藤太希氏に不動産投資の実情について解説してもらった。

不動産収入7000万円クラスは希少

 前述の投稿者は年間7000万円ほどの不動産収入があるというが、実際にそれぐらい稼ぐことは可能なのか。

「今回の投稿者の方は土地を相続したり購入したりして物件を建てていたようですが、年間7000万円ほどの不動産収入というのは、数十を超える土地や高級物件を所有していた地主クラスではないと難しい収入だと思います。仮に家賃が数万円単位の物件を何十、何百軒も管理して7000万円も収入を得るのは、個人では再現性がかなり低い。賃貸需要が旺盛な大都市圏などに、一部屋あたりの家賃を高く設定した高級物件をいくつか管理していると考えるのが現実的でしょう。

 ですから不動産投資で年収7000万円クラスはかなり希少なケースといえます。おそらく普通の人がゼロからの不動産投資で成功して成り上がったというケースではなく、もともとかなりの資産家だったという可能性が高いと思います」(頼藤氏)

 一般的な所得のビジネスパーソンが不動産投資で安定して収入を得られるのは、どんな物件なのか。

「今の主流ですと、都内のワンルームマンションへの投資が最もメジャーでしょう。土地を購入してマンション一棟丸ごと建てられる人は本当に一握りですし、賃貸需要のある地域で空き地を見つけること自体が難しいですからね。また一般人ですと、預貯金など自己資金に加えて、銀行融資を利用して物件を購入することになります。融資を受けられるかは年収が400万円以上であるかどうかがポイント。マンション一棟を購入するとなると、年収は数千万円クラスでないと到底手が出せません。

 そうなると、賃貸需要が大きい地域に位置し、物件価格もそこまで高くない既存のワンルームマンションに注目が集まるワケです。昨今の物件価格は、家賃の250倍近くの水準になっており、仮に月10万円の家賃収入が見込める物件であれば2500万円ほどする計算になります」(同)

 ただ不動産投資ビギナーの場合、注意点も多い。

「不動産投資は基本的にインカムゲインで利益を目指す投資となるので、返済スケジュールを立てていくなかでキャッシュフローがいくらになるのか、慎重に計算しなくてはいけません。持ち出しの自己資金があるのであればいくらなのか、ローン返済期間の家賃収入でどれだけ返済をまかなえるのか、という具合にシミュレーションを行う必要があります。

 またローン開始から数十年経過したときは、当然建物の劣化も考えられます。そうなると家賃を低く設定するなどして入居者を呼び込むことも視野に入れなくてはいけなくなるので、収入が減る可能性も考えられます。シミュレーションが不十分だと、想定よりも返済に時間がかかることもありますし、それだけでなく利益が消えてしまうことも珍しくありません。また不動産投資は時勢や景気に左右されることも多々ありますので、常に不測の事態に備える意識は持っておくべきでしょう」(同)

不動産投資は最強とはいえないが安定しやすい

 不動産投資は事前に何らかのトラブルが発生して減収することも想定し、余裕もってシミュレーションしておくことが重要だという。

「物件にはさまざまな不確定要素が付きまとうので、それらすべての要素をなるべく把握し、対策を施すといったことが不動産投資でうまく稼ぐコツといえます。たとえば、かなり重要なのがエリアの見極め。ローン開始時は、賃貸需要が高くてもその後どんどん人口減少していけば、競合との入居者争いは過熱していくことになります。家賃を下げたり、『家具家電付き』『インターネット無料』などのオプションを付けたりすることで競合との差異化を図ることもできますが、当然さらなる出費が必要だったり実質的な収入減となったりするわけです。ですから購入前に人口変動が大きくなりそうかどうかのチェックは必須です。

 また、税金や保険料、ローン金利の変動、物件の修繕費もかさみますし、自然災害による建物の損害なども当然考えられます。こうした費用はあらかじめ発生するものであると考え、備えておいたほうが中長期的に安定して回収できるでしょう」(同)

 結論としては、「やっぱり不動産を持つのが最強」とは安易にいえなさそうだ。

「金融商品というのは、そのすべてがメリット、デメリットを兼ね備えています。そのため、不動産にしかない安定した収入を確保できるという強みもあれば、逆にほかの金融商品のほうが優れている面もあります。したがって株式投資、投資信託など資産をうまく分散して投資したほうがお互いのリスクを補完できますし、バランスがよくなるでしょう。

 不動産投資は、自分の信用力をもとに他人の資金によってレバレッジをきかせる金融商品ですので参入しやすいですし、利益を出すことができれば老後の資金にすることも夢ではありません。また引っ越しは重労働なので、一度入居してしまえば住人が離れづらくなり、収入が途切れにくくなるのも魅力。ですから、最強とは決していえませんが、ローンを借りられる信用力がある方であれば、ほかの投資と並行して挑戦してみる価値はある投資手段だといえるでしょう」(同)

(取材・文=文月/A4studio、協力=頼藤太希)

頼藤太希/(株)Money&You代表取締役、経済ジャーナリスト

頼藤太希/(株)Money&You代表取締役、経済ジャーナリスト

中央大学商学部客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年にMoney&Youを創業し、現職へ。資産運用・税金・Fintech・キャッシュレスなどに関する執筆・監修、講演などを通して日本人のマネーリテラシー向上に注力すると同時に、月400万PV超の女性向けWebメディア『Mocha』や登録者1万人超のYouTube「Money&YouTV」を運営している。『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)、『マンガと図解 はじめての資産運用』(宝島社)、『はじめてのNISA&iDeCo』(成美堂出版)など著書累計100万部超。日本証券アナリスト協会検定会員。宅地建物取引士。ファイナンシャルプランナー(AFP)。日本アクチュアリー会研究会員。

Twitter:@@yorifujitaiki

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