「このマンションに今投資すれば、払い込んだ時点から年間利回り13%を20年間にわたり保証します! さらにマンション建設の5年後には、購入額の100%で買い取り保証! 10年後には2倍の価格で、20年後には4倍の価格で買い取り保証します! 今なら、さらに購入額の10%を即キャッシュバック!」
これは不動産価格の暴騰に沸く東南アジアのタイ・パタヤで、地元系中堅ディベロッパーがコンドミニアム(日本でいうマンション)の販売資料で謳っている内容。一般顧客向けに出している物件だが、保証内容は単純計算で20年後にはなんと660%以上に増え、購入者に返されることが保証されるという内容。しかし、そんなとんでもないリターンが、個人の購入者相手に支払われることなどありえるのだろうか?
現在、東南アジア諸国はASEAN(東南アジア諸国連合)統合予定を来年の2015年に控え、ASEAN加盟国の中で中心的な役割を果たすタイなどでは不動産価値が大きく上昇している。タイといえば日本では、最近は軍事政権化やデモなどがニュースで取りざたされて不安なイメージもあるが、経済的に見るとASEANの中でも特に先進的な国であり、物流や交通のハブとしての役割を担い、金融においても巨大バーツ経済圏を擁し、海外からの経済成長期待は大きい。
さらに、タイは先進国と比べると比較的物価も安く、繁華街も巨大市場となっており、世界中からの観光需要も大きい。特に外国人からの観光で人気が高いのは、東南アジアのハブ空港であるバンコクのスワンナプーム空港から車で約90分のリゾート地パタヤなど。実際にパタヤでは、中東、インド、東南アジア、中国など多様な人種の観光客で昼のビーチも夜の繁華街もごった返している。12月や1月の冬などは、寒い地域からバカンスに来たロシアや北欧の人々も加わり、ホテルがどこも満室となっているという。
そのパタヤでは、150万バーツ(日本円で500万円程度)から外国人でも小さなコンドミニアムを買うことができ、長期滞在する観光客がコンドミニアムを買ってバケーション中のホテルとして使い、自分が使わない期間は賃貸に出すという使い方で購買需要が大きくなっている。そこに、経済力の上がったタイの都市部の人々がバケーション用に購入する動きが重なり、巨大な購買需要が生まれている。加えて、タイには不動産の取得税や固定資産税が現在はなく、コンドミニアムの取得、維持のコストが安い上に、ASEAN統合の期待により国内外から投資が盛んとなり、不動産価格が上昇している。
このように、タイのパタヤで不動産価値が上がっているのは事実だ。とはいえ、冒頭の660%の利回り保証などありえるのだろうか? 今回は、そんなタイの不動産市場の実態について取材した。