そういった人が増えたのはなぜだろうか。近年、ギリシャなど危機的状況にある国が増えたことを受けて、各国の金融当局者が集まるバーゼル銀行監督委員会では、国債をリスク資産と認識し、国債を保有する金融機関に自己資本の積み増しなどを求める新規制が議論されている。
これは、国債を大量に発行し、中央銀行である日本銀行が大量購入している日本にとっては、影響を受けかねない動きだ。事実、昨年12月には、格付け会社のムーディーズ・インベスターズ・サービスが日本国債の格付けを従来の「Aa3」から「A1」に一段階下げた。
2月12日の経済財政諮問会議では、日銀の黒田東彦総裁が、巨額の日本国債の金利上昇リスクが高まっていることに異例の言及をした。その上で、「すぐに緊縮財政を実施して政府の支出を減らし、財政再建を行わなければいけない」と安倍晋三首相に迫ったが、その黒田総裁の発言は議事録から削除され、関係者には緘口令が敷かれていたことが、一部報道によって明るみになった。こういった経緯もあって、資産を国内から海外の不動産などに移す動きが広がっているようだ。
60代の保守的な層も東南アジアなどへの海外投資に興味
しかし、海外への投資となるとリスクも高い。欧米の不動産などは安定感があるものの、利回りは低く、リスクに見合った収益を上げるのは簡単ではない。一方、経済成長著しい東南アジアでは、高い利回りが期待できる物件があるものの、欧米よりハイリスクになる。
これまでも当サイトでは、2014年10月3日付記事『利回り660%保証?過熱するタイ不動産投資の“危険な”実態 日本人も被害の恐れ』や、同年12月29日付記事『【現地ルポ】タイで不動産バブル?日本企業殺到で不動産高騰の街 値崩れの不安材料も』で、タイなどで不動産投資が過熱しており、投資の際にはリスクもあることから、注意が必要なことを伝えてきた。
実際、東南アジアの不動産などへの個人投資の現状は、どうなっているのだろうか。タイで不動産投資に関する調査サービスや、独自調査に基づいた不動産情報を提供しているAIS(Asia Investment Support)に実情を聞いた。
「東南アジアの不動産に投資する日本人といえば、以前は30~40代で積極的な投資スタンスの人が一般的でした。しかし、昨年末あたりからは60代以上で、投資スタンスも保守的な人の相談が多くなっています。今は、新しいタイプの人が投資を検討している時期ではないかと思います。利回りだけでいえば、東南アジアで不動産バブルの可能性が高いのはカンボジアやバングラデシュなどです。しかし、リスクも同時に存在するので、保守的な人は東南アジアの中では先進国で、比較的には安定感もあるタイなどを希望するケースが多い傾向があります」(AIS担当者)