林原:「抵抗勢力」の出現です。生産性を向上させるためには、仕事のやり方を変える必要があります。それは小手先の改善にとどまらず、業務を抜本的に見直すような業務改革です。
業務を改革して生産性を向上させることに反対する人はいません。しかし、自分の業務に影響が及び、その影響が自分個人の不利益になると、途端にその人は「抵抗勢力」となって、業務改革を阻止する行動に出るかもしれません。さらに、その人が社内で高い地位にいると、最悪の場合、業務改革がつぶされる可能性があります。
――林原さんは数々の現場で実績を上げられていますが、トラブルの「未然防止」活動に取り組む際に気を付けていることを教えて下さい。
林原:まず、「抵抗勢力」ですが、彼らを排除するのは簡単ではありません。よって、活動を始める前に、関係者全員に目的・趣旨と活動の手順、それぞれの役割・責任をきちんと説明して全員のコンセンサスを得る必要があります。
その説明の方法は、全員対象で説明会を実施する前に、「抵抗勢力」となりそうな人がいたら、事前の根回しで、了解を得ることが必要です。その結果、全員対象の説明会で活動を応援してもらえれば、その人は「抵抗勢力」とはならないでしょう。
もう1つは、本書で解説している3ステップ、「緊急対応」「再発防止」「未然防止」を1つ1つ地道に実行することが大切です。「未然防止」は、業務改革そのものです。改革に王道はありませんが、方法を間違えなければ必ず成果は出てきます。
――「未然防止」活動に取り組む中で、協力姿勢を見せない人が出てきたら、どのようにアプローチすべきですか?
林原:その人から直接話を聞いてみることです。このとき、「なぜ協力しないのか」と詰め寄るのでなく、相手の目線での対話が重要です。
ひょっとしたら、その人はもっと良い考えを持っている可能性があります。その人の考えを取り入れて、「未然防止」活動を振り返って再構築してみると、その活動がより進化するかもしれません。
繰り返しますが、「未然防止」活動は業務改革そのものです。根付かせて効果を出すためには、方法論が先行するのでなく、マインドを変革する必要があります。したがって、「未然防止」を推進する人たちは、強い意志をもって、関係者と同じ目線で対話しながら、少しずつマインドを変えていってください。そして、経営トップのリーダーシップも必須です。
――最後にこのインタビューの読者の皆様にメッセージをお願いします。
林原:本書では1つ目のステップに焦点を当てて説明をしていますが、トラブルの未然防止を実行していくと、本来業務を見直す機会も得られるため、本来業務を改革し、2つ目のステップである「本来業務の効率化」も達成できることにつながります。本書の第5章、事例研究での未然防止の成果がその例です。
どんな活動でも、それに携わっている人たちのモチベーションの維持・向上が不可欠です。そのためには、活動の成果を全員で共有し、「やって良かった」と思えるような活動にしていくことが大切です。そして、活動は一過性ではなく、継続させることで、その効果は増大していきます。「継続は力なり」です。
本書を参考にしていただき、トラブルを「未然防止」して、現場の生産性向上を実現してほしいですね。
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。