ところが、そこに割り込んできたのが伯母でした。「どうしてそんなお粗末なお葬式にするの?」と葬儀屋の前で言い放ち、さらに叔父も「兄さん(本条さんの父)はまがりなりにも上場企業の取締役部長まで務めた人だよ」と加勢してきます。
ここで問題になったのは、本条さんの父親が葬式について具体的に書面に残さないまま、逝ってしまったことでした。本条さんが「質素な葬式は父が望んだこと」と主張しても、それは通じるはずがなかったのです。さらに本条さんの弟が勤める会社の上役と、父が勤めていた会社の社員も通夜や告別式に出席したいと言い出しました。
困り果てた本条さんに追い打ちをかけたのが葬儀屋です。「このプランでは、お宅様にふさわしいお葬式にはならないような感じもします。こちらのプランですと、ご予算は超えますが、ふさわしいお葬式に近い形になりますよ」と本条さんに提案し、本条さんもそれを受け入れてしまいます。
さらに、ほかにもさまざまな不幸が重なり、結局数十万規模の予定だった葬儀は、150万円くらいまで膨れ上がり、本条さんは「簡素に」という父の言葉を守れなかったのです。
他にも、「葬式よりも疲れる」といわれる「遺品整理」をさせないための「生前整理」では、自分の大切なものだからこそ自分が納得して処分してもらうことの大切が、実際に遺品整理をした家族によって告白されていたり、延命治療を望まなかったものの、それを文章に残さなかったがために遺された兄弟たちが不仲になってしまったりするなどのケースがつづられています。その上で、柳田さんがどのように片づけを進めていくべきかを解説してくれています。
「自分の人生の片づけは自分でしたい」と思っている人から、自分の親がそういった年齢に差し掛かってきている人、さらにはその一つ下の世代も含めて、本書の内容に触れなければいけない世代は幅広いはずです。
死んでからも後悔しない、後悔させないために、一読しておきたいことがつまった一冊です。
(新刊JP編集部)
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※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。