当連載前回記事『中国、領土拡張狙い蛮行の限り尽くす!世界中が非難でも無視、紛争をまき散らす』で、南シナ海におけるアメリカと中国の緊張関係および両国の思惑について見てきた。
現在、中国は領有権の拡大を目的に、南シナ海の南沙諸島を埋め立て、人工島を建設しているが、その人工島は、「シーレーン(海上交通路)」において、非常に重要な場所に位置している。いわば、海の大動脈のど真ん中にあるわけだ。中東から輸出された石油は、インド洋や南シナ海を通り、日本およびその先のアメリカまで運ばれる。
南シナ海を含むシーレーンは、世界の石油や天然ガスの約3分の1が通過するといわれている。特に、日本や東アジアの国にとっては、中東発の資源のほぼ100%が通ることになる。中国は、そんな場所に2つの人工島をつくっているわけだ。
国際法上、「人工島においては領有権を認められない」というのが基本ルールである。中国が「自国の領土である」と主張する場所には、もともと岩やサンゴ礁しかなく、そこを人為的に埋め立てたにすぎない。
当然、それを「島=中国の領土」とみなすことはできず、排他的経済水域を設定して他国の船舶の移動を禁じることもできない。しかし、それを半ば強引に主張しているのが中国である。
それのみならず、人工島に3本の滑走路をつくることで軍事基地化しているため、他国が手を焼いているわけだ。南シナ海の中央に位置する2つの人工島に軍事基地ができるということは、東アジア全域が中国の軍事的支配下に置かれる可能性があるということだ。そのため、周辺国にとって、中国の動きは大きな脅威となっている。
また、中国は昨年5月に南シナ海に防空識別圏(ADIZ)を設定することを示唆した。防空識別圏とは、空の防衛圏のことであり、領土沿岸の特定範囲内において、常時防空監視が行われる。
これに対して、アメリカは強く批判したが、実際的な動きには出なかった。しかし、9月に日本で安全保障関連法が成立したことによって、今後の展開は大きく変わりつつあるのが実情だ。
こういった中国のやり方を踏まえた時、東アジアの安全保障は、もはやアメリカ単独で維持できるような状況ではない。必然的に、日本をはじめとした周辺国の協力体制が必要になるわけだ。
南シナ海を中心に考えた場合、アメリカおよび北大西洋条約機構(NATO)の主要基地は、日本の沖縄基地である。そして、南シナ海の周辺には、かつてアメリカと戦ったベトナムやイスラム圏のインドネシアなど、アメリカに対して必ずしも良い印象を抱いていない国も多い。
アメリカがそういった国と対話する際、日本が間に入ることでスムーズに進むようになるわけで、アメリカは日本の支援なくしては立ち行かないともいえる。
『戦争へ突入する世界 大激変する日本経済』 中国経済の崩壊は、人民元の主要通貨入り、アメリカ利上げでどう進むのか? 難民とテロに苦しむ欧州で始まったユーロ分裂と対立の行方は? 南シナ海での米中衝突と、日本の中国・韓国包囲網による新たなアジア秩序とは? 動乱へと向かう世界のなかで日本経済に起こる大きな転換とは? 日本人が知らない世界の大変化と日本経済の今後を読み解く!