なぜバッグ購入より旅行のほうが満足度高い?モノ購入の幸福度が経験購入より低い理由
幸福をテーマとした研究は多くの研究者の関心を集め、心理学、経済学、医学、公共政策など幅広い分野で行われています【註1、註2】。日本でも「ハピネス」「ウェルビーイング」といった言葉が耳目に触れる機会は多いと思います。人は誰でも幸せになりたいと思っており、そのために時間や労力、時にはお金を使って進学、就職や転職、資格取得、結婚、子育てなど、人生においてさまざまな選択をしています。同様の目的で商品やサービスが購入されることもありますので、こうした研究は消費者行動研究でも行われています。
憧れのブランドの腕時計を買ったり、お気に入りのミュージシャンのコンサートに行ったり、奮発して美味しいものを食べたりするなど、人生を楽しみ、幸福度を高めるためになんらかの購買と消費をした経験は多くの人が持っていると思います。
これらの購買は、マテリアル購買と経験的購買に分けることができます。マテリアル購買は、所有が目的であり、洋服、宝飾品、美術品、テレビ、自動車などの有形財が対象となります。これに対して経験的購買は、人生経験の獲得であり、旅行、登山、美術鑑賞、外食などの無形財が対象となります。
もちろん有形財の中には、たとえば自動車ではドライブを楽しむなど、所有だけでなく経験からも幸福感が得られることがありますので、どちらかへの分類が難しい場合もあります。このことから、ヴァンボーヴェンは有形財か無形財かではなく、それらの主な購買意図が所有なのか人生経験の獲得なのかで分類すると、誰にでも簡単に認識でき、信頼性があり広く共有されている意味のあるものになると説明しています。したがって、有形財は購買意図によってどちらの購買にも当てはまることになります。
しかし、ヴァンボーヴェンが大学生に行った、それぞれの購買意図で過去に購買したものを想起してもらう調査からは、マテリアル購買では衣類、テレビ、ステレオ、コンピュータなどが、経験的購買では旅行、食事、さまざまなイベントや施設のチケット代・入場料などが挙げられ、消費者の認識において、それらがほとんど重複しないことを確認しています【註1】。
では、マテリアル購買と経験的購買では、幸福度はどちらが高くなるのでしょうか。