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プーチン会談裏、安倍首相が外務省との暗闘に屈服…現実路線=北方2島返還を断念

文=深笛義也/ライター、取材協力=石郷岡建/ジャーナリスト
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 だが57年5月16日、岸信介首相は「ソ連が南千島を返還しない限り、平和条約は結ばない」と発言。ソ連のほうは60年、歯舞、色丹の返還は、米軍の日本からの撤退が条件と主張し、日ソ共同宣言は凍結された。72年に沖縄は日本に返還。91年にソ連は崩壊したが、4島か2島かという問題は、今でも引きずられてきている。

 永田町や霞ヶ関では、2島返還を言う者は「国賊」と罵倒される風潮さえある。国賊というが、要するに“ダレスの脅し”がいまだに効いているのだ。4島返還を頑なに主張するのは、親米派。2島返還を言う者は、対米自主派だということができる。

「日本固有の領土」は通用しない

 日本ではよく「日本固有の領土」という言い方がされる。北方領土に関しては、1644年に江戸幕府がつくった「正保国絵図」などが持ち出され、松前藩が4島のみならず樺太、千島列島まで支配していた史実が示される。

 だが、ロシアだけでなく、欧米ではそのような考え方は通用しない。世界史の授業を思い出せばわかるように、その時代によって地図に占める国の面積は変わり、消滅した国もあれば、新たに誕生した国もある。

 少なくとも第二次世界大戦が終わるまでは、戦争で勝ち取った領土はその国のものとなるという考え方で国境は決まってきた。古来からほぼ同じ地域で国が続いてきたのは、世界を見渡しても日本くらいで、「日本固有の領土」というのは、世界標準の考えではない。

 戦争で勝ったから自分のものというロシアと、古来からの日本の領土という、真っ向から対立する主張。落としどころを見つける努力はたびたび行われてきた。

 もっとも象徴的なのは2001年、シベリアのイルクーツクで行われた、プーチン大統領と森喜朗首相による非公式会談である。歯舞・色丹の2島は引き渡しの手続きを話し合い、国後・択捉についてはその帰属について話し合いを続けるという並行協議が、森首相から提案された。

 だが、この案には自民党内部、日本の外務省内部から強い反発が湧き起こった。親米派と自主派のぶつかり合いの末、国策捜査と批判される手法で、鈴木宗男・自民党衆議院議員と佐藤優・外務省主任分析官が逮捕されたのは、彼らが2島先行返還の提案者だったからだといわれている。この時、鈴木議員は「国賊」と罵られた。

 09年には、ウィン・ウィン方式の解決が日露の間で浮上。北方領土を50%ずつの面積で分けるという案に、プーチン大統領も積極的だった。

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