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「ただ目立ちたかった」小池都知事、豊洲も何も進展せず人気急落…必死の「争点隠し」

文=小川裕夫/フリーランスライター
「ただ目立ちたかった」小池都知事、豊洲も何も進展せず人気急落…必死の「争点隠し」の画像1「都民ファーストの会」 都内で総決起大会(Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

 7月10日から、東京都は自宅の白熱電球2個とLED電球1個を無償交換する環境政策を開始する。これは、小池百合子都知事が選挙戦のときから訴えてきた肝煎り政策だ。東京都は、小池都知事と昨年爆発的な人気を呼んだピコ太郎とが共演するキャンペーン動画を制作。電球交換の開始に先立ち、動画で政策をPRしている。世界的にも人気になっているピコ太郎を起用することで、電球交換政策に弾みをつけるのが狙いだが、その裏には都政の停滞を隠す思惑があるのではとも囁かれている。

「東京大改革」を旗印にした小池都知事は、都知事就任以降に築地市場の豊洲移転延期、東京五輪の整備負担見直しなどを矢継ぎ早に打ちだしてきた。そうした実行力が小池都知事の高い支持率につながっていたわけだが、このところ小池人気に陰りが見られるようになった。

 その背景には豊洲問題が膠着していることが挙げられる。いつまでたっても方針を打ちだせず、決められない都知事とも囁かれるようになった。東京五輪の整備費用・開催費用もいったんは削減されたものの、再び膨張する兆しが出てきた。そうした状況のため、定例会見で記者から「大山鳴動して鼠一匹では……」と質問されると「失礼ですね」と気色ばむ一場面もあった。

 都知事選出馬会見でも露呈したように、小池都知事が都政に対して知識がなかったのは周知の通り。それでも、「思っていたよりは、無難にこなしている」(都庁職員)といった評判も聞かれる。

 しかし、豊洲問題と東京五輪といった二大テーマについてはいっこうに進展がみられない。ともに前任者・前々任者などから申し送られてきた負の遺産だけに、小池都知事に直接的な責任はない。それでも選挙戦時から大言壮語していたテーマだけに、小池都知事への大きな期待は一気に落胆へと変わってしまうだろう。全国紙記者は言う。

「もともと、小池都知事は都政に興味があったわけでも造詣が深かったわけでもない。時の権力者に近づき、“政界渡り鳥”などとも揶揄されたように、とにかく目立つ場所にいたいという気持ちが強くある。そうやって頭角を現してきた。安倍政権になってから不遇をかこっていたから、都知事に立候補したのも目立ちたいという願望が先行しただけでしょう。都政が抱える大きな課題は東京五輪と豊洲市場ですが、この2つが決着すれば、小池都政はレームダックになるとも予測されている。間もなく就任1年を迎えますが、この2つ以外の話題がほしいというのが本音でしょう」

都議選

 新しい話題を必要とするのは、今夏に実施される都議選のためでもある。自民党と袂を分かって都知事選に出馬した小池都知事は、自民党都連を敵に回すことで人気を上げてきた。だから、都議会に強固な地盤を持っていない。都民ファーストの会が一貫して都知事選前後から支援しているが小勢力。それだけでは心もとない。公明党を味方につけることにも成功しているが、何よりも自身の支持基盤を強固にするには、今夏の都議選で大勝することが求められる。

 こうした事情から、小池都知事は都民の意見が二分している豊洲問題を都議選の争点にすることを封印。争点隠しとも受け取れる豊洲問題の非争点化は、幅広く有権者を味方につける意図があるとされる。

 だが、小池都知事のどっちつかずの姿勢は、これまで支持してくれた支援者離れを起こす危険性も内包している。そこで、小池都知事が新たな人気回復策として打ちだしたのが、得意の“環境”だった。

 小池都知事といえば、環境大臣時代にクールビズを立案したことでも知られる。小池環境大臣の旗振りもあり、クールビズは一気に浸透した。クールビズのように環境政策で話題をかっさらえば、小池人気も回復する。都議選前にピコ太郎との共演動画を制作・配信する狙いもここにある。

 しかし、LED電球への無償交換だけでは、いかにも話題性が弱い。小池都政における環境政策には前述したLED電球への交換のほかにも、無電柱化の推進、フードロスの削減、水素社会の推進、太陽光・地熱発電といった自然エネルギーの活用、林業の再生などがある。無電柱化はインフラ整備の一環だが、電線類を地中化することで景観が向上するため、環境政策としても位置付けられている。

 しかし、これらの多くは以前の歴代の都知事も取り組んできた政策であり、小池都知事オリジナル政策ではない。特に、『無電柱革命』という著書も出し、就任直後から目玉政策としてきた無電柱化の推進は、就任時にすでに23区内で約51パーセント、東京都がセンター・コア・エリアと位置付ける首都高速中央環状線内にいたっては85パーセントにも達していた。それだけに、小池都知事オリジナルの環境政策を新たに打ちだしていく必要に迫られている。

グリーンボンド

 小池都知事が人気回復の秘策としているのが、グリーンボンドの発行だ。グリーンボンドとは、環境政策を実行するために必要となる資金を調達する新しい起債方法とされる。今般、日本でも資産運用に対する意識が高まりつつあるが、日本では安定性から債券市場への信頼が高い。特に、国内の投資家は国債や都債に絶大的な信頼を寄せている。

 グリーンボンドは発行に際して第三者機関からの厳しいチェックが入る。また、グリーンボンドで調達した資金が環境の向上・改善に資する政策にきちんと使われたかどうかもレポーティングされる。

 そうした手間が余分にかかるため、発行体にとってグリーンボンドは面倒な債券でもある。一方で、資金調達手段を多チャンネル化することで、債券の金利を抑えられるというメリットもある。

 東京都がグリーンボンドを発行するという行為そのものにはそれ以上の意味がある。現在、世界の投資家たちの間ではESG投資の気運が高まっている。ESGとは、「E=Environment」「S=Social」「G=Governance」を意味し、単に利益の追求だけではなく、環境や社会に貢献する投資をするというものだ。それだけに、「世界的にもグリーンボンドは注目され、発行が相次いでいる」(環境省職員)という。

 しかし、日本国内でグリーンボンドの気運は高まっていない。日本では2014年に日本政策投資銀行が初めてグリーンボンドを発行。以降、日本国内での発行は4例にとどまる。日本政策投資銀行を含めて発行例は5つしかないのだ。地方自治体に限定すればグリーンボンドを発行した例はなく、東京都がグリーンボンドを発行すれば国内の自治体では初になる。それだけグリーンボンドの国内市場は成熟していないということになるのだが、東京都がグリーンボンドを発行すれば世界から注目を浴び、環境先進都市という評判を得るかもしれない。

 自身の得意分野でもある環境政策に新たな投資を呼び込むことで支持率回復につなげようとする小池都知事。昨年度には、そのトライアル版として100億円分の「東京環境サポーター債」を発行し、即完売させた。その実績などを考慮すれば、東京都のグリーンボンド発行準備態勢はすでに整っているとみていい。

 LEDへの交換、グリーンボンドの発行など環境政策を大々的に仕掛けることで、再び小池株は急騰するだろうか。
(文=小川裕夫/フリーランスライター)

小川裕夫/フリーライター

小川裕夫/フリーライター

行政誌編集者を経てフリーランスに。都市計画や鉄道などを専門分野として取材執筆。著書に『渋沢栄一と鉄道』(天夢人)、『私鉄特急の謎』(イースト新書Q)、『封印された東京の謎』(彩図社)、『東京王』(ぶんか社)など。

Twitter:@ogawahiro

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