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西島基弘「食品の安全、その本当と嘘」

「天然物は安全」は本当?危険な食中毒が絶えず…毒魚で死亡例、ジャガイモで健康障害

文=西島基弘/実践女子大学名誉教授
「天然物は安全」は本当?危険な食中毒が絶えず…毒魚で死亡例、ジャガイモで健康障害の画像1「Gettyimages」より

 食中毒の大半は細菌とウイルスによるものです。そのほかには寄生虫による食中毒、自然毒によるもの、化学物質によるものがあります。自然毒による食中毒は動物性と植物性に分類されます。

「天然物は安全」は本当?危険な食中毒が絶えず…毒魚で死亡例、ジャガイモで健康障害の画像2

動物性自然毒

 
 動物性自然毒としてはフグ中毒が最も知られています。フグによる食中毒は一歩間違えると命を落とす危険性があることは、多くの人が知っています。しかし、表1に示したように毎年のように多くの人がフグによる食中毒になっており、大半が家庭で発症し、なかには死亡する人もいます。フグの難しさは、共通して肝臓や卵巣は猛毒ですが、フグの種類によって皮など食べられる部位が違う点のほかに、同じ種類のフグでも生息する海域や季節によりフグ毒(主な毒性物質:テトロドトキシン)の量が違うなど、個体差が大きいことです。

 フグ処理資格取得に当たっては、調理師試験(学科や実技)か、資格取得に必要な講習会制度があり、その結果に従って都道府県知事が免許を発行して安全性を確保しています。厚生労働省では「一般の方がフグを調理・喫食することは極めて危険であり、最悪の場合死亡する恐れがある事から、絶対にしないでください」と注意喚起をするとともに、フグ処理有資格者以外の者がフグを取り扱うことのないよう周知徹底を図るように、各都道府県知事・各政令市市長・各特別区区長宛に通知を出しています。釣りをする人が注意喚起を理解し、これを遵守すれば、フグ中毒の大半はなくなります。

 フグ以外の重要な魚介類の中毒はアオブダイやハコフグ、クエなど(主な毒性物質:パリトキシン)によるものです。特にアオブダイの肝臓を食べて死亡した例があります。熱帯産の毒魚として知られていたアオブダイ等が小笠原から四国沖にも棲息するようになり、徐々に北上しているのが気になります。

 熱帯に棲息する多種類の毒魚(主な毒性物質:シガトキシン)による中毒患者は全世界では毎年数万人といわれます。症状は胃腸障害や、循環器障害、神経障害ですが、特にドライアイスセンセーションといわれる症状は、水に触るとドライアイスに触ったような感覚になるもので、治癒するまでには数週間から数カ月かかるといわれています。

西島基弘/実践女子大学名誉教授

西島基弘/実践女子大学名誉教授

実践女子大学名誉教授。薬学博士。1963年東京薬科大学卒業後、東京都立衛生研究所(現:東京都健康・安全研究センター)に入所。38年間、「食の安全」の最前線で調査・研究を行う。同生活科学部長を経て、実践女子大学教授に。日本食品衛生学会会長、日本食品化学学会会長、厚生労働省薬事・食品衛生審議会添加物部会委員などの公職を歴任。食品添加物や残留農業など、食品における化学物質研究の第一人者として活躍している

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