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神戸山口組、任侠山口組、会津小鉄会…事務所使用禁止でマフィア化の懸念【沖田臥竜コラム】

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使用差止めの仮処分の申立をされた真鍋組事務所(尼崎市)

 ヤクザ事務所への風当たりの強さから、ヤクザ組織の在り方が変わろうとしている。

 ヤクザの組員といえば、事務所当番をすることは日常的だった。組員が当番に入るためのヤクザ事務所は、街中に当たり前のように存在していた。かつて、地域によっては、ヤクザ事務所が街の治安維持の役割を果たす側面もあったのは紛れもない事実だった。

「言うことを聞かないのやったら、怖いおっちゃんらのところに連れていくで」

 自分の子どもに限らず、わがままな子どもをしつけるために、ヤクザ事務所に連れていくという脅し文句を口にする大人たちがいる時代もあった。実際に、親が手に負えなくなった子どもをヤクザ事務所に連れていき、親分に預けて、躾をお願いするケースがあった。『仁義なき戦い』(東映)などのヤクザ映画でも見られた描写だ。

 だが、暴力団排除条例施行以降、縁日からテキ屋の屋台が撤去されていったように、昨今は街中からヤクザ事務所が撤去されるという動きに拍車がかかっている。

 神戸山口組の本部的役割りを果たしているとして、去年10月に使用禁止の仮処分を受けていた兵庫県淡路市の神戸山口組系俠友会本部に対して、今度はその処分を守っていないとして7月3日、間接強制が決定された。これにより、11日以降に同本部を事務所として使用していると見なされた場合、組幹部らに1日につき100万円の制裁金が課せられることになった。この決定を不服とし、神戸山口組サイドは大阪高裁に執行抗告を申し立てた。

 間接強制の手続きは、六代目山口組の分裂の波紋を受けるかたちで、昨年分裂した七代目会津小鉄会(原田昇会長派)系心誠会事務所に対しても、京都府暴力団推進センターによって起こされている。

 間接強制が決定してしまえば、俠友会本部周辺に設置された防犯カメラや地域住民らへの聞き込みによって、使用禁止の仮処分が守られているかどうかを判断していく方針のようだ。これについて、ある組の幹部はこのように話している。

「俠友会だけではなく、ほかの組織も“明日は我が身”ではないか。どの組織でも以前から事務所使用禁止の仮処分を下された場合の措置として、住民票を事務所に移すなどし、住居として使用するという対策を練っていた。なかには組織から組員を除籍し、仮に組事務所としての使用禁止の仮処分を受けても、除籍した組員の住居として、人が出入りできるように備えていた組織もあると聞いている。だが実態としては、裁判所の判断だけで、組事務所の役目を果たしているかどうかを決められてしまうわけだ。どれだけ組織防衛に回っても、“お上”はヤクザを認めないということなのだろう。もう、地下に潜っていくしかないのではないか」

尼崎でも事務所排除の動きがあったが……



 6月28日、任侠山口組において、ちょうど西日本ブロックが開催されていた四代目真鍋組本部(兵庫県尼崎市)が、地域住民の要請により暴力団追放兵庫県民センターから使用禁止の仮処分の訴えを起こされている。

 これを受けた報道のトーンは「暴力団事務所が7カ所もある尼崎市で、住民が声を上げたのは勇気ある行動」と称賛するものが多かったが、果たして実際にそうなのだろうか。

 筆者は生まれも育ちも尼崎である。そのため、尼崎には相当数の友人、知人がいる。だが、少なくとも筆者の友人、知人のなかに、訴えを起こすために協力を求められた尼崎市民は1人もいない。ことの是非ではない。ただ約20人の尼崎市民の意見だけを取り上げて、「尼崎市住民」と一括りにまとめて、大々的に「是正義」と記者会見を開くことに違和感を覚えてしまうのである。

 筆者が元ヤクザだから身贔屓で言うわけではない。少なくとも尼崎市では、「どこそこにヤクザの事務所がある」とわかるからこそ、住民は安心できている側面があったように思う。なぜならば、そこに組員らがいることがはっきりし、不穏な動きがあれば、すぐに通報するなどの対策が取れるからだ。そんななか、ヤクザを根絶するのならまだしも、事務所だけを封鎖させたところで問題は複雑化するだけではないか。ヤクザであること自体は罪ではない現行法の下では、表向きの事務所がなくなることで、海外マフィアのように、どこに潜んでいるかわからないほうがよほど不気味ではないだろうか。

 一方では、こういった声も聞こえてきている。

「事務所が使えなくなることを想定して、すでに会合などを飲食店で行い始めた組織も存在している」(ヤクザ事情通)

 また、現場サイドの若手組員らからは、「一層のこと事務所がなくなってくれれば、事務所当番もなくなるし、拘束されることも随分と減るので楽になる」と言う声もあるようだ。

 どちらにしても、ヤクザ組織のしきたりや伝統が様変わりしようとしているといえるだろう。そして無理な取り締まりは、いつの時代も新たな歪みを生み出す可能性を秘めているのではないだろうか。
(文=沖田臥竜/作家・元山口組二次団体幹部)

●沖田臥竜(おきた・がりょう)
元山口組二次団体最高幹部。2014年、所属していた組織の組長の引退に合わせて、ヤクザ社会から足を洗う。以来、物書きとして活動を始め、『山口組分裂「六神抗」』365日の全内幕』(宝島社)などに寄稿。著書に『生野が生んだスーパースター 文政』『2年目の再分裂 「任俠団体山口組」の野望』(共にサイゾー)など。最新小説『死に体』(れんが書房新社)が7月下旬に発売予定。

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