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『ソーシャルもうええねん』著者・エンジニアブロガー村上福之インタビュー

あの異色ブロガーが、“しょっぱい”出版ビジネスの闇に挑む

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村上 まあ、それは僕が技術者だからでしょうね。技術者って、すべてのネガティブな可能性を予測して、ひとつひとつ潰していかないと満足しないというか、安心しない生き物なんですよ。なかなか楽観視はしない。というか、すべてのネガティブ要素を想定できるのが優秀なエンジニアだと思うので。

 そのおかげで、エンジニアは慢性的にネガティブだからとかく精神を病んだりするし、優秀なエンジニアほど、どこかブッ壊れた変わり者だったりするワケです。ただ、プロジェクトの中で、いちばんネガティブじゃないと良いプログラマーにはなれないのも事実。あのビル・ゲイツだって「明日、会社潰れるかも。どうしよう……」って毎日考えている、という話だし。いやいや、アナタ世界一の富豪じゃんって。経営者でエンジニアなんて人は、ホントに毎日「会社が倒れるかも」と本気で考えて、どこか頭がおかしくなっているもの(笑)。そういう意味では、経営者には文系が向いているんでしょうね。

 「とりあえずキラキラ女子を集めて、取引先を呼んで騒げばなんとかなるだろ、ワッハッハー」
 「ここでわざと麻雀に負けておけば仕事は取れるだろ、ワッハッハー」

みたいに考えられるから。

 で、本の話に戻すと、やっぱり自著についてもネガティブに捉えていたから、どうやればネガティブ要素を潰せるかを考えました。そこでトライ・アンド・エラーを重ねるのは時間もかかるし面倒くさいから、とにかく既存事例──他の版元や著者のやり方を徹底的にパクろうかなと。そういう発想で、ビジネス書の実情を調べ始めたんです。

●版元への不満をSNSで吐露

ーー版元であるNanaブックスにも、SNSでかなりあけすけに不満を述べたりしていましたよね。

村上 誤解を解いておくと、いまは版元さんと、とてもいい関係ですよ。ただ、途中では「死ねっ!」と思ったりしたこともあったりなかったり……。

 Nanaブックスの販売事例をいろいろ伺っていると、ある本の返本率がありえない数字をたたき出していた。そこで、悩みに悩んで、「参考になる他社事例は積極的にパクろう。僕もいろいろ調べますから、そちらでもリサーチしてください」と協力をお願いしたんです。

 ただ、出版ってホンマに儲からないビジネスなんだなと、調べるほどに痛感しましたよ。なんてショッボいビジネスなんだろう、と。なんとなく活気がありそうな印象のビジネス書界隈にしても、そんなに旨味のないジャンルであることが見えてきた。初版数千部だけで大して書店でも動かず、返本でごっそり倉庫に返ってくるなんて本も多いそうだしね。

ーー具体的に、どういった形でリサーチを進められたのですか?

村上 いわゆる出版大手からビジネス系に強いところまで、版元の人間に徹底してぶっちゃけトークを聞いて回ったんです。過去に原稿を書いたことがあるとか、取材を受けたことがあるとか、知り合いのツテを頼ったり、Twitterで聞いて回ったりとか、そういうところから。

 例えば、

 「取次からの支払いって、版元には何カ月後から入ってくるの?」
 「取次への営業って、どうなってる?」
 「配本計画って、ちゃんと作って取次に出してる?」
 「この本、けっこう売れたみたいだけど、実売ってどのくらい?」
 「本の帯に芸能人とか著名人がコメント出しているけど、この謝礼はどのくらい払った?」
 「この本の広告費はいくら?」
 「御社の発行部数や売上に対する広告費の割合って、何%くらいなの?」

……などなど、とにかく気になることはなんでも、しつこいくらいに聞いて回った。

 で、売れている本はこういう数字の内訳で、こういうカラクリや仕掛けなのか、ということがだんだん見えてきた。そこからできることをコピーしよう、ということで進めていきました。

 それにしても、売るのがうまい版元ってホントにあるんだな、と感じましたね。「某ときめいちゃう片付け本」みたいな版元なら、それこそ白紙でも本が売れるんじゃなかろうかと。それくらい「売る」ことを意識している。ぶっちゃけ、とりあえずそれっぽい表紙を付けて、とりあえず文字で埋めて、電車広告をバンバン出して、『金スマ』みたいなテレビ番組に著者を出せば、どんな本でも売れるんじゃない? くらいに思いました。

 売れている本は、そうやってちゃんと仕掛けているから売れている。でも、僕の本なんて、どう考えても3万部くらい売れたら御の字だろうと思うから。ビジネス書のビジネスって、そういうモンだと理解したんですよ。けっこうしょっぱい商売。実際、本なんか書いても、そうは儲からないですよ。それをとっかかりに名前を売って自分の本業にお客を引っ張ってきたり、講演やらセミナーやらで派生ビジネス展開しようとするビジネス書作家が多いのは、よくわかります。

BusinessJournal編集部

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