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“異例の”経団連次期会長人事、内定までの混迷の舞台裏~なぜ有力候補が続々消滅?

文=編集部
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“異例の”経団連次期会長人事、内定までの混迷の舞台裏~なぜ有力候補が続々消滅?の画像1経団連会館(左/「Wikipedia」より/Jo)
 米倉弘昌経団連会長が窮地に陥った。米倉氏は5月末に経団連会長の任期満了を迎えるが、1月8日、最有力の後継候補だった川村隆・日立製作所会長の線が消えてしまったからだ。

 日立はCEO(最高経営責任者)、COO(最高執行役責任者)を新設、4月1日付で中西宏明社長が会長兼CEOに就任し、川村氏は3月31日付で会長を退任。6月の株主総会で取締役も外れ相談役になる。経団連会長に就任する条件として、「現役の会長・社長」という不文律があるため、川村氏の会長就任という可能性は消えた。加えて川村氏は、「日立にとって経済界や対政府の活動は大切だ。活動の多くは新会長にお願いする。私が相談役になる頃には経団連副会長の任期を終了するので、経団連の活動を終える」と明言した。

「ポスト米倉」の有力候補が次々と消えていくという異常事態が続いている。川村氏の会長退任発表が年始早々に行われたのは、財界関係者の思惑をはっきりと打ち消す意味合いがあったのかもしれない。

 同様の動きはちょうど1年前にも見られた。昨年1月、坂根正弘・コマツ会長(当時)が4月1日付で取締役相談役に退き、6月下旬の株主総会で取締役も退任し、相談役・特別顧問になることが発表された。坂根氏は大胆な構造改革でコマツを世界第2位の建設機械メーカーに育て、安倍晋三政権で成長戦略づくりを担う産業競争力会議の民間議員としても存在感を高め、有力な経団連会長候補だった。「コマツという会社の規模から(経団連会長)はあり得ない。交代は既定の路線です」と当時、コマツ関係者は語っていたが、「経団連の人事競争に巻き込まれるのを避けるために(坂根氏は)会長を辞任した」という見方も強かった。

 一連の経緯ではっきりしてきたことは、「経団連の会長がそんなに魅力のあるポストではなくなった」(経団連の元副会長)ということだ。

影落とす東芝のトップ人事

 米倉会長から奥田碩氏など経団連会長経験者への相談は、昨年中はなかったといわれるが、人事決定に向けた今後の動きは次のようになる。

 経団連には、旧・経団連または日経連(02年に旧・経団連が日経連を統合して、現在の経団連が発足)の会長を務めた名誉会長が5人いる。豊田章一郎氏、今井敬氏、根本二郎氏、奥田碩氏、御手洗冨士夫氏の5人だ。米倉会長はこの5人に次期会長を誰にするかを伝えることになっている。

 経団連内部では「米倉会長の意中の人物は、佐々木則夫・東芝副会長」という見方が強い。安倍首相周辺で佐々木氏の評価が上がっていることも見逃せない。佐々木氏は民間議員として、政府の経済財政諮問会議で法人税関連などさまざまのアイデアを出している。

 佐々木就任に影を落とすのは、昨年春に起こった東芝社内におけるトップ人事をめぐる混乱だ。西田厚聰会長は当時「来年、(自分が辞めて)佐々木を会長にすることはない」と周囲に漏らしていたが、佐々木氏が副会長のままで経団連会長になれるのかどうか、疑問を呈する向きもある。だが、昨年秋に日商会頭を退いた東芝の岡村正相談役が米倉会長への仲介役を務め、佐々木氏を経団連会長に内定してしまえば、西田氏も佐々木氏を切れなくなり、佐々木氏が東芝会長に昇格する可能性も出てくる。佐々木氏は64歳と若いことも魅力だ。

 そのほかに、米倉氏が副会長の中で評価しているといわれているのが三菱重工業の大宮英明会長だ。しかし、三菱重工幹部は「うちは(経団連会長を)やらない」と早くから明言していて、大宮氏本人も受ける気はない。三菱重工は三菱グループ御三家の1社だが、「軍需関連事業を手掛ける企業出身者でいいのか」と懸念する声があることを同社は気にしているためだ。

 昨年副会長に就任した新日鐵住金の友野宏社長も候補者として名前が挙がるが、同社OBの三村明夫相談役が昨年11月に日本商工会議所の会頭に就任したばかりであり、同一企業の出身者が経済3団体のトップに同時に就くことは好ましくないとする暗黙のルールがある。三菱商事の小島順彦会長も経団連会長就任に意欲を示しているが、米倉会長は「(次期会長は)メーカーの中から」と示唆している。

OB、2期連続化学メーカー出身…異例の人事が内定

 そんな中、1月9日、日本経済新聞電子版が経団連次期会長として「東レ会長の榊原定征氏で調整」と報じた。榊原氏は現役の経団連副会長ではなくOBであり、もし実現すれば「現役の中から選ぶ」というルールが破られることになり、“異例の人事”となる。

 榊原氏は東レの炭素繊維事業を主力事業に育てたことで知られ、政府の産業競争力会議の民間議員を務めている。製造業である東レの会長であれば、「モノづくり重視の姿勢を示すことができる」との考えも働いたためとみられる。

 東レからの経団連会長起用は初めて。住友化学の米倉会長から東レにバトンタッチされれば、2代続いて化学メーカーからの選出ということになる。東レクラスの規模(連結売上高:約1兆6000億円)の企業出身者が経団連会長に就任するのも異例なことであり、米倉会長は川村氏に断られたため、やむなく榊原氏の起用に動いたとの見方が広がっている。

 1月14日に経団連内で開かれる正副会長会議で次期会長が内定される段取りだが、これだけ難航した会長選びであるため、予断を許さない状況が続く。
(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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