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町田徹「見たくない日本的現実」

スカイマーク、経営危機の元凶はJAL救済 根拠なき不当介入で市場歪める国交省と族議員

文=町田徹/経済ジャーナリスト

 交渉難航について一部報道では、スカイマークがANAとJALを傍若無人に手玉に取ろうとしたとか、セクハラと批判されかねないようなミニスカートを客室乗務員に着用させたり、搭乗客の不満に耳を傾けなかった西久保社長の個性に問題があるといわんばかりのものが目立つ。しかし、そうした議論はピント外れだ。そもそも無理筋のライバル2社との共同運航を迫ったのは、国交省や航空族議員である。

●“泥縄式”の規制

 そこで指摘しなければならないのが、そもそも国交省にこれほど強い行政指導を行う権限があったのかどうかという疑問だ。というのは、前述の記者会見の際に、太田大臣が根拠として挙げたのが、「8.10ペーパー」と呼ばれるものだったからである。同ペーパーは、再建を果たしたJALの再上場が約40日後に迫っていた12年8月になって、国交省航空局が“泥縄式”にまとめたJALを縛るための規制だ。市場で淘汰されて破たん処理されるべきだったJALが公的支援で再生されて存続した結果、競争環境が歪むことを阻止する狙いで設けられた。

 しかし、欧州の先例をみても、本来的な意味でも、この種の規制は再建中(公的資金が返済されるまでの期間)に限定すべきだ。それにもかかわらず、同ペーパーは再建がほぼ完了した時期になって設置され、自立後のJALが自らの裁量で行うべき経営の手足を縛るものとなった。これだけで、いかに“泥縄式”の規制かがわかるだろう。同ペーパーが設けられた背景には、政権奪還を果たした自民党の航空族議員の間に、民主党政権主導で再建したJALへの反発が強かったことがある。

 そして、すでにJAL自身が抵触しないと判断していたと述べたように、同ペーパーが規制する項目には、機材などへの新規投資や新規路線の開設、混雑空港の発着枠の配分といったものしか含まれていない。もちろん、これにより先の羽田空港の発着枠の配分で、JALが大幅に割を食う結果となった事実はある。

 しかし、スカイマークが当初求めていた共同運航は、あくまでも既存路線の話だ。同ペーパーが規制するJALの新規路線の開設にはあたらない。このため、スカイマークへの指導は、既存のルールを拡大解釈したものであり、不当ではないかとの疑義が残っているのである。換言すれば、こうした行政指導は、国家権力の民間企業の経営に対するあるまじき介入だ。

●破たん処理すべきだったJALの救済

 さらに指摘すると、国交省の航空市場への介入はロクな結末をもたらさないという問題もある。というのは、今日のスカイマークの経営危機の根本的な原因のひとつが、市場競争で淘汰され、破たん処理すべきだったJALを救済したことにあるからだ。このため、航空市場に需要を上回る供給力が温存されて、比較的体力が乏しいスカイマークが破たんの危機に瀕したという事実がある。

町田徹/経済ジャーナリスト

町田徹/経済ジャーナリスト

経済ジャーナリスト、ノンフィクション作家。
1960年大阪生まれ。
神戸商科大学(現・兵庫県立大学)卒業。日本経済新聞社に入社。
米ペンシルべニア大学ウォートンスクールに社費留学。
雑誌編集者を経て独立。
2014年~2020年、株式会社ゆうちょ銀行社外取締役。
2019年~ 吉本興業株式会社経営アドバイザリー委員
町田徹 公式サイト

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