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三上洋「IT漂流時代」

時代の寵児Ustream、ひっそり撤退…なぜ視聴者&配信側に見捨てられた?甘さがアダ

文=三上洋/ITジャーナリスト
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 Ustreamでは人気アーティストや、企業協賛の大きなイベントの巨大な配信が行われる。その配信には数万人単位で視聴者が集まるのだが、視聴者の興味はアーティストやイベントであって、Ustreamそのものではない。数万人が来ても、ほかのUstream配信には目もくれない。

 それに対して、ライバルであるドワンゴのニコニコ動画・生放送は、徹底した囲い込みを行った。会員制にした上で同種の配信を宣伝し、見やすいトップページをつくって視聴者を定着させていた。Ustreamも似たような努力をしていたが、トップページに並ぶのは風景を映すだけのライブカメラだったり、通知機能が甘いこと、動線の問題などがあって、囲い込みに失敗していたのだ。

 2つ目の理由は、ビジネスモデル自体の問題だ。ライブ動画配信サービスでは、動画生放送のために太い回線を常時利用する。つまり継続的にコストがかかる構造であり、安定した収入が必要だ。

 ライバルのニコ動は、視聴者への月額課金モデルを収益の柱とした。YouTube(YouTube Live)は、広告モデルが中心。それに対してUstreamは、ニコ動やYouTubeとは異なり、配信側から利用料金を取るビジネスモデルを中心に置いた。

 ここでの焦点は「プラットフォームとコンテンツ、どちらに力を入れるか」だ。ニコ動はコンテンツに力を入れた。独自の制作チームをつくり、イベント配信だけでなく独自番組も数多く制作して視聴者を集めた。ニコ動は視聴者への課金モデルなので、コンテンツに力を入れるのは当然だったろう。

 それに対して、Ustreamはプラットフォームビジネスを標榜していた。Ustream Asiaの中川具隆社長はスタート当初、「Ustreamはプラットフォームとして力を入れる。高画質・ソーシャル連携など魅力的な配信プラットフォームを提供することで、配信者にアピールしていく」と発言していた。つまり優れたプラットフォームを提供すれば、配信者=お金を払ってくれる顧客を得られるだろう、という戦略だったのだ。

 しかし配信者側からお金を取るビジネスは、メディアとしては無理がある。それは流すコンテンツの制作に大きなコストがかかるためだ。配信側=コンテンツ提供側は、コンテンツ自体の制作にコストをかけた上で、さらに配信するプラットフォーム=Ustreamにもお金を払わなければならない。コンテンツの出し手に課金するという手法は、顧客をプロモーションや有料コンテンツだけに絞ることになり、魅力的な配信が少なくなる原因となった。

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11:30更新
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