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白井美由里「消費者行動のインサイト」

品揃え豊富な店ほどモノが売れない? PB増加で品揃えが悪くなっている?

文=白井美由里/慶應義塾大学商学部教授
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 豊富な品揃えと消費量の関係を分析した研究もあります【註2】。カーンとワンシンクは、ジェリービーンズを24色(フレーバー)、あるいは6色置いておき、被験者に別の作業をするための待ち時間に自由に食べてもらうという実験を行いました。結果は、色分けした状態で置いておくと、被験者の消費量は24色のほうが6色よりも多くなったのです。

 豊富に感じる品揃えの中から商品を選ぶと、消費への楽しみが増すので、意識していなくてもより多く消費してしまうのです。買い物客は品揃えの多さを認識すると、それを自分の消費量の判断基準にするという説明も別の研究者によってされています【註3】。買い物客に豊富な品揃えをわかりやすく示すことができれば、消費量を増やし、売り上げ増加につながる可能性が示唆されています。

 これらの研究から示されている豊富な品揃えのメリットとデメリットは、どれも無視できないものがあり、豊富な品揃えの維持と削減のどちらがいいかは一概にはいえません。少なくとも買い物客に多すぎて選べないと感じられるような品揃えは避けなければならないでしょう。

品揃えの「質」

 それでは、どのようにしたら買い物客が満足するような「豊富な品揃え」を実現できるのでしょうか。それは、買い物客にとって違いがない、あるいはほとんどないと感じられる商品を減らすことです。不要と思われるサイズや売れ行きが芳しくない商品を除き、空いた陳列スペースに売れ筋商品を置くことで品揃えを簡素化した実験からは、ほとんどの買い物客が品揃えの変化に気づかなかったか、逆にバラエティが増えたと感じたことが報告されています。変更前の品揃えを提供している店舗と比較すると、売り上げも上昇したことが報告されています【註4】。

 つまり、買い物客に品揃えが豊富であると感じさせながら、実際の品揃えを減らすことは可能ということになります。小売業者は、利益につながる効率的な品揃えを実現するためにも、買い物客の知覚を取り入れた品揃えの「質」について検討してみてはいかがでしょうか。豊富な選択肢を提供しているようで、実は余計な選択肢を増やしているのかもしれません。

品揃えの悪化

 他方で、少なすぎる品揃えにも注意が必要です。日本では、2000年代後半からPB(プライベートブランド)ブームが起き、特に大型スーパーは、PBをさまざまな製品カテゴリーへと広げる一方で、NB(ナショナルブランド)の大幅な絞り込みを行ってきました。その結果、PBしかない、あるいは選択肢がない製品カテゴリーがいくつか見られるようになりました。品揃えの悪化を実感している買い物客も多いのではないでしょうか。