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宇多川久美子「薬剤師が教える薬のリスク」

夢のがん治療薬、重篤な副作用多発!死亡例や糖尿病で生涯注射が不可欠になる例も

文=宇多川久美子/薬剤師・栄養学博士

 同学会では「患者・家族向け文書」も作成しており、オプジーボは「すべての患者に有効な夢の新薬ではない」と強調しています。重篤な副作用が起き得ることや、リウマチなどの自己免疫疾患患者といった、同剤を使えない患者がいることにも理解を求めています。

 同学会は、医療者向け、患者向けの文書を公開した理由について、「分子標的治療薬イレッサ(一般名:ゲフィチニブ)が高い期待の中で2002年に発売されたものの、直後に間質性肺炎が多発し、800人以上の患者が亡くなった教訓」と説明しています。日本肺癌学会のホームページには「現在では、肺がん治療には欠かすことができないゲフィチニブですが、その安全で効果的な使用が根付くまでに多くの犠牲がはらわれたことを肝に銘じておく必要があります」と記されています。

糖尿病など予期していなかった副作用も

 14年7月に皮膚がんの一種「メラノーマ」の治療薬として承認されたオプジーボですが、厚生労働省によると、15年9月までに、オプジーボ使用後に6人が重症筋無力症や筋炎を発症し、うち80代の女性が死亡したと発表しています。6人とも薬との因果関係を否定できないということです。

 また今年1月、厚生労働省は、メラノーマの治療に使用後、1型糖尿病を発症したとの報告が7例あったと報告しています。死亡例は出ていませんが、1型糖尿病は急激に重症化し、適切な治療をしないと死亡するリスクもあるといわれています。また、発症後は原則的に生涯にわたってインスリン注射が必要となります。

 使用にあたっては、患者に副作用の説明を十分にして、オプジーボ使用中に急激な血糖値の上昇、口の渇き、体重減少などが出た場合は、糖尿病の専門医と連携して対応することを求めています。

 製造販売元の小野薬品工業によると、14年の承認以降、オプジーボを投与された推定患者数は今年4月末時点で5976人、2865人になんらかの副作用があり、そのうち763人が重篤例と報告しています。

 発売当初、オプジーボはがん細胞そのものを攻撃するのではなく、自己の免疫力を活性化するため、今までの抗がん剤と比べて副作用も極めて少ないとみられていました。

 ほかの抗がん剤と比較すれば、その副作用は少ないかもしれませんが、重症筋無力症や1型糖尿病など予期していなかった副作用も報告されています。使用されるケースが増えていけば、今後も予測不能な副作用も出現するかもしれません。

 そして何より、使用されるケースが増えればその薬剤費も莫大な額になります。7月19日付本連載記事『画期的な薬が続出で命が救われる一方、その高額医療費を健常者が負担、国民皆保険崩壊も』において指摘しましたが、国民皆保険制度を破壊しかねないほど医療費を高騰させかねません。このことが日本にとって致命的な副作用とならないことを祈っています。
(文=宇多川久美子/薬剤師・栄養学博士)

宇多川久美子/薬剤師・栄養学博士

宇多川久美子/薬剤師・栄養学博士

薬剤師として20年間医療の現場に身を置く中で、薬漬けの治療法に疑問を感じ、「薬を使わない薬剤師」を目指す。現在は、自らの経験と栄養学・運動生理学などの豊富な知識を生かし、感じて食べる「感食」、楽しく歩く「ハッピーウォーク」を中心に、薬に頼らない健康法を多くの人々に伝えている。『薬剤師は薬を飲まない』(廣済堂出版)、『薬が病気をつくる』(あさ出版)、『日本人はなぜ、「薬」を飲み過ぎるのか?』(ベストセラーズ)、『薬剤師は抗がん剤を使わない』(廣済堂出版)など著書多数。最新刊は3月23日出版の『それでも「コレステロール薬」を飲みますか?』(河出書房新社)。

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