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WHOの「たばこ自販機禁止」推奨を「義務ではない」と一蹴…恥ずべき自民党たばこ議員の姿

文=ヘルスプレス編集部
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たばこ自販機が消える日~東京五輪・パラリンピックが受動喫煙対策なしで開けない理由の画像1麻生太郎・財務大臣は愛煙家。しかも財務省は、日本たばこ産業の株の3割を持つ(写真はWikipediaより)

 さて、1府11省2庁ある「中央省庁」のうち、JT(日本たばこ産業)株の3割を保有しているのはどこか、ご存じだろうか。

 そう、財務省である。斯界の健全な発展を目的とする「たばこ事業法」は、葉タバコの生産からたばこの流通・販売、小売店や自動販売機の設置も定めており、その財務省が所管官庁になっている。ちなみに、年間のたばこ税収は2兆円超だという。

 では、現在の財務大臣はどなたか答えられるだろうか。

 正解は、麻生太郎氏だ。愛煙家でつとに知られる麻生氏だが、6月7日の衆議院厚生労働委員会で唐突に飛び出した下記の発言を、どう受け止めたのだろうか。

「未成年者がたばこを目にする状態になっていることこそが問題だ。国民の健康・命に責任を負っている厚労省として、(たばこ自販機の設置禁止を)財務省に強く要請したい」

 発言者は、党内の歩み寄り案にも「まさかの大臣の抵抗」で応じた結果、健康増進改正法案の今国会中の成立見送りも辞さなかった塩崎恭久厚生労働大臣である。

 受動喫煙対策強化の是非を「これは哲学の問題」とまで言い切る塩崎氏の上記発言も、日本も加盟するWHO(世界保健機構)の「たばこ規制枠組み条約」を後ろ盾にしていることは明らかだろう。

 その指針において、陳列販売やたばこ自販機は「広告に相当する」と定義されて「禁止」を推奨しているからだ。この日の委員会でも、塩崎氏は「条約に批准しているのに守られていない」点を強調しつつ、「寝耳に水」の財務省関係者を大いに困惑させた。

 後ろ盾といえば、「国民の声」も強い味方だったかもしれない。

 今年5月に公表された国民意識調査(国立がんセンター調べ)では、日本国内でたばこ自販機の設置を禁止することに関しての意見を問うたところ、成人の68%が「賛成」と表明した。事実、JT側も近年における自販機の減少傾向は認め、かつての30万台超えも昨年は20万台を割り込んだという。

サッカー日本代表選手も苦言

 その設置禁止案の口火が切られた折も折、サッカー日本代表のある選手が自身のTwitter上にこんな苦言を書き込んで耳目を集めた。

「既得権益なんですかね? 政府も忙しいでしょうけど、喫煙者を完全否定しているわけではないんやから法案成立まで巧く持っていけばいいのに」

 本田圭佑選手の意見である。彼の発言の裏側にIOC(国際オリンピック委員会)とWHOが連携して掲げる「タバコのないオリンピック」実現へのアスリート魂が透けて見えるのは当然だろう。

 タバコ消費量世界一(喫煙率も上昇中)の中国でさえ、北京五輪開催に際して飲食店を含む公共空間での全面禁止を義務付け、違反者への罰金条例も制定したのだから、世界で活躍する日本代表選手の苦言投稿も無理からぬことだ。

哲人・塩崎恭久厚生労働大臣の孤軍奮闘

 では、世界の本田選手に名指しされた「政府」のほうは、どんな塩梅なのかといえば、少し時計の針を戻して5月23日、衆院本会議場での一幕を再現してみよう。

 自席に腰掛ける安倍晋三首相を囲んでいた「自民党案」をまとめたトリオの、茂木敏充政調会長、田村憲久政調会長代理、渡嘉敷奈緒美厚労部会長。そこで首相は隣席の塩崎氏の机をさすりながら、3人組に“安倍スマイル”でこう励ましたという。

「問題はこの人(塩崎氏)だね。任せるから今国会での成立をよろしく頼みますよ」

 ところが、厚労省案と自民党案の溝は埋まらず、「見送り」の顛末となった。その後も「哲人」塩崎氏は一歩も譲らず、その矛先を今度は財務省へと向けて新たな場外戦へのキックオフを宣言したという次第だ。

 先制点を打ち込まれたかたちの財務省側は、業界からの反発や「営業の自由」などを守護神に踏ん張るしかなく、WHO条約の件も「推奨」は「義務」ではないとの見解でかわしているのが現状だ。

煙の五輪は開けない!

 ところで自民党内の愛煙家といえば、誰の名前を思い浮かべるだろうか。

 最近では、例の「(がん患者は)働かなくていいんだよ!」の野次を飛ばし、野党から厳しく糾弾された大西英男議員の「タバコ・スパスパ映像」が記憶に新しい。

 もう少し大物スモーカーを列挙すれば、前掲の麻生氏を筆頭に、いずれもたばこ議連所属の野田毅前税調会長、大島理森衆議院議長、石破茂元幹事長あたりの面々が代表格だ。

 支持率急落中の安倍首相が「鶴の一声」をかけたところで、その紫煙嗜好を制せるような方々ではないが、そこは「中間報告」なる憲政史上に残る汚点手段で共謀罪法案を強行成立してしまった内閣の腕の見せ所だろう。

 思い起こせば件の共謀罪、政府は当初「テロ等準備罪」という巧みな語感の印象操作を行い、共謀罪が成立しないと「TOC(国際的組織犯罪防止)条約に加盟できない」、同条約を締結できないと「東京五輪・パラリンピックは開けない」とさえ安倍首相は公言していた。

 それならば、世界的見地からして、受動喫煙法が成立しなければ「東京五輪・パラリンピックは開けない」という毅然とした態度を、なぜ取れないのだろうか。

 それこそ最大の皮肉を込めて、「どうか総理、『健康増進改正案』こそ強行採決を!」と言いたくなるほど、国内の煙たさは変わらない。
(文=ヘルスプレス編集部)

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