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トイアンナ「私は言いたい」

嫌悪感から人の性癖を批判するのは「性癖差別」ではないか?人を深く傷つけないか?

トイアンナ/ライター、性暴力防止団体「サバイバーズ・リソース」理事
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嫌悪感から人の性癖を批判するのは「性癖差別」ではないか?人を深く傷つけないか?の画像1「Thinkstock」より

「性癖の自由」が危機に瀕している――。そう言われても、ピンとこないかもしれない。ことの発端は、弁護士の太田啓子氏によるツイートだった。

<「真空パック アダルトビデオ」で検索して吐き気。仮に作り物であったとしても、あれに性的に興奮するのは猟奇的。猟奇的な嗜好も内心に留まるなら自由だけどその嗜好が表出した表現物には恐怖を覚えるとしか。本当に真空パックにしているなら即刻全現場でやめるべき。死人が出かねない。>

マイナーな性癖が取り上げられた珍事

 上記をご覧になった一般的な男性の感想は「真空パックなんてプレイあるんだ……何するの、それ?」だろう。私が調べた範囲での解説にとどまるが、真空プレイとはSMの一種で、マゾ側を布団のように真空パックに詰め、吸引して楽しむものである。SM愛好家ですらマイナーな性癖であろうから、ましてや一般人にはそんなプレイの認知すらないだろう。

 念のため、筆者も大手動画・DVD通販サイトの「DMM.R18」で人気ジャンルを調べたが、「熟女」「ギャル」などおおよそ予想できるものばかり。「真空」に至っては、検索タグとしてすら登録されていなかった。

性癖をモラルで差別するリスク

 インターネット上では、太田氏がなぜこのキーワードを知るに至ったかばかり揶揄されるが、それは大した問題ではない。問題なのは、この性癖が「猟奇的」「恐怖を覚える」から「即刻全現場でやめるべき」とモラルの観点で断罪されてしまったことだ。

 もともとSMプレイは片方がもう一方を嗜虐する性質上、安全性の確保は最重要項目だ。性癖とはいえ相手が望まない暴力はすべて犯罪である。したがって、拘束を伴うプレイではある言葉を発したら被虐側は限界に達しているので、問答無用でプレイをやめるべし、とセーフ・ワードを決めるのが通例である。言葉を発せないプレイでは、ジェスチャーなどで限界を伝える。

 真空パックが仮に「ジェスチャーでも安全性を確保しづらい」「呼吸を確保できているか怪しいため、セーフ・ワードを発せられない」といった安全性の観点から問題視されていれば、性暴力防止を訴える太田氏の主張にも沿ったであろう。アダルトビデオ業界の関係者を含め賛同者も多く得られたに違いない。

 しかし今回は、太田氏が「猟奇的」といったご本人の嫌悪感を中心に批判してしまったため、炎上のきっかけになった。双方が合意しており、安全性が確保されているなら性癖は個人の自由である。それを「一般的な目で見てキモチワルイから」という理由で排斥するのは、差別でしかない。

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