妬むことは、たしなめられ……
子どもの頃、友だちと自分を比較して残念に思ったことはありませんか? たとえば自分よりいいオモチャやゲームを持っていた、あるいは自分の家よりいいところに旅行やレジャーに行った、などが「ありがち」なようです。
そんなとき、親に妬ましい思いを訴えると、親はどのように反応したでしょうか? ほとんどの場合で子どもをたしなめるようです。「人を妬んでもいいことはない」と妬ましい気持ちを否定することがほとんどでしょう。
妬みは何も生み出さないのか?
実際、多くの場合で人を妬んでも何も生まれません。自分より業績を上げた人や異性にモテる人を妬んでも、業績は上がりませんし、異性にもモテません。妬みは脳内で「心の痛み」を生み出すネガティブ感情のひとつなので、苦痛を生むだけで終わることがほとんどです。親が子どもの妬みをたしなめるのはある意味で正しいことです。
ですが、心理学的には人の心にムダなものは一切ありません。使い方が難しいこともありますが、人が持つあらゆる感情は何かを生み出すためのものなのです。妬みもそのような感情のひとつです。では、妬みを上手に使えば何を生み出せるのでしょうか。
妬みが生み出すものは成功だが、その反動で失うものも
妬みが生み出すもの、それは社会的な成功です。妬みは「私たちが欲しいもの」を教えてくれる感情なのです。そして、欲しいものを手に入れるモチベーションも私たちに与えてくれます。ただ、ひとつ残念なことは「欲しいものの合法的な獲得法」は教えてくれないのです。
そして現代社会のなかで何かを手に入れるには時間がかかります。多くの人は手に入れるまでの長い間、心の痛みを抱え続けることを嫌がります。心の痛みは心の余裕を奪うので、人を思いやることも日々を楽しむことも難しくなってしまいます。ここで欲しいものを諦める、または妬みを忘れてしまえば、妬みによる苦痛もなくなり心の余裕も取り戻せます。要は、妬みの向こうにある成功よりも、諦めることの快適さに流されてしまうのです。