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同居介護や近距離介護を選ぶべきではない理由

文=中村未来/清談社
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「費用が安い特別養護老人ホーム(特養)は満室で空室待ちのところが多いです。入居は申し込み順ではなく、必要度合いが高い人から。介護者が他府県に暮らしている遠距離介護のケースは優先順位が高くなります。また、介護保険以外の自治体サービス、たとえば緊急通報システムや食事の宅配サービスも、独居のほうが『家族がそばにいない』という理由で使いやすい傾向があります」(同)

 そもそも、親子が同居して世帯が一緒になると、所得に応じた介護保険の負担軽減制度でも不利な面がある。たとえば、介護保険でサービスを利用する場合に支払う利用者負担は、所得に応じて月々の上限額が設定されている。

「受給する年金額が少ない親のひとり暮らしの場合、負担上限額は月1万5000円です。しかし、現役の子どもと同居し世帯が一緒の場合は月4万4000円になってしまうケースもあります」(同)

親戚からの「同居のススメ」は聞き流すべき

 もっとも、いくら遠距離介護を選択したくても、事情によってそれができない人もいることだろう。親の病気やケガで離れて暮らしていた子どもが一時的に同居し、その後も親が同居を望むようなケースもある。

「病気やケガで精神的に弱って、『一緒にいてくれないと心配』『帰らないでほしい』などと親が言い出し、実家から帰れなくなったという女性もいました。そう言われたら、子どもだってつらい。しかし、介護というのは、その先何十年も続く可能性があります。一定の距離をもって接することが、結果的に親の自立を促すことにもつながるケースもあるでしょう」(同)

「遠距離介護はマネジメント」とは、太田氏の言葉だ。介護費用はどのくらいかかる見込みなのか、保険は何が適用されるのか、どんな公的サービスを受けられるのか……など、感情と切り離して準備と計画を立てることが大切だという。

「親戚のなかには、『将来的には同居を考えたほうがいいんじゃないか?』などとアドバイスする人もいるかもしれませんが、手を出さず口だけ出してくる第三者の言葉は聞き流しましょう。それより、親が元気なうちに、老後の暮らし方の希望、そして資金計画がどうなっているかを聞いておくといいと思います」(同)

 その際は「なぜ今、それを聞く必要があるのか」をしっかり伝え、「現実的な目線で考えてもらうようにしてください」と太田氏。

 介護費用は、親の自立を支援するためのお金だ。そのため、基本的には親のお金でやりくりすればいいという。

 介護保険のことやサービスについて、具体的に相談したいことがあれば、まずは地域包括支援センターに行くといいそうだ。住んでいる地域ごとに管轄のセンターがあるので、親の暮らす地域を管轄するセンターに相談すればいい。所在地は役所に聞けば教えてくれる。

「今は、介護にもいろいろな方法があります。思い込みで選択肢を減らしてしまうのは損。『どうすれば、自分も親もいい関係でいられるか』を最優先に考えたいですね」(同)

 いつ介護が始まってもいいようにしっかり準備しておくことも、親孝行のひとつなのである。
(文=中村未来/清談社)

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