全国の市町村が大わらわになっている。固定資産税は毎年1月1日を起算日としているが、固定資産税を計算するうえで重要になるのが土地や家屋の評価額だ。この評価額を見直す作業、いわゆる評価替えが実施されるのは3年に一度。納税者はこの機会しか不服申し立てができない。今年、その評価替えが実施される。つまり、今年を逃すと次のチャンスは2021年まで待たなければならない。
これまで固定資産税の課税額に対して疑問を抱く納税者は少なかった。固定資産税は市町村(東京23区は東京都)が算出し、納税額を一方的に通知するが、役所が税額という大事な計算を間違えるはずがない、と信じられてきた。
しかし、2014年に埼玉県新座市で27年間にもわたって固定資産税を過徴収していたミスが発覚。課税対象者の夫婦は、固定資産税を払うことができずに自宅を売却していた。この一件は、行政関係者の間で“新座ショック”とも呼ばれた。
これを受けて、総務省は自治体に固定資産税の確認をきちんとするよう通知。しかし、その後も固定資産税の課税ミスは絶えない。総務省職員は語る。
「課税額は高く間違えても安く間違えても、納税者の不信感が芽生える。その不信感は簡単には払拭できない。だから万が一にも間違えてはいけないという覚悟が必要。それでも、人間がやることだから誤ることもあるだろう。それにしても、こんなに頻発することは想定外だった」
リーマンショックや東日本大震災などで固定資産税収は減少したものの、今年度は東京・大阪といった大都市部の地価が上昇。その影響で、固定資産税は9兆円台にまで増収する見通しとなった。複雑な計算で課税ミスの多い固定資産税だが、市町村の財政を支える基幹税でもある。それだけに、税収増は逼迫する市町村財政にとって干天の慈雨でもある。
空き家問題
しかし、9兆円という大きな財源である固定資産税にも危機が忍び寄っている。それが、日本全国を覆う人口減少、そして相続人の所在不明という問題だ。人口減少は相続されないまま放置された土地を多く生み出した。先般、元総務大臣の増田寛也氏が座長を務める所有者不明土地問題研究会が調査したところ、日本全土における所有者不明の土地は九州の面積を超える規模であることが判明。以前にも、増田氏は全国896の自治体が消失するというシミュレーションをして「消滅可能性都市」を発表しているが、所有者不明土地は自治体関係者を震撼させるのに十分な内容だった。東京の区職員は、こう話す。
「今、自治体が頭を抱えているのが空き家問題です。地方都市は言うに及ばず、東京23区内でも空き家が発生しており、行政は問題に対処できていません。空き家は防犯や防災の面から見ても好ましくありませんが、家屋は個人の財産になるので行政が勝手に立ち入ることができません。そのため、長らく空き家問題は放置されていたのです」