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中西貴之「化学に恋するアピシウス」

ビールに医薬品のような作用も…週に3缶以下でがん発生率低下

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ビールの中でも、より健康に良いかもしれない黒ビール(撮影=筆者)
「太平洋ゴミベルト」という言葉を知っていますか? アメリカのカリフォルニア州とハワイ州の間に海のゴミが集まり、日本の2倍以上の面積にわたって大量のゴミが漂っている海域のことです。


 1997年に発見され、集まっているゴミの量は7万9000トンにもなります。その大半がプラスチックゴミで、漁網、トロ箱、生活ゴミ、さらには2011年の東日本大震災時の津波によるものとみられる流出物も含まれています。海洋汚染は当然のことながら、これらのゴミをクジラやウミガメが飲み込むなどして死亡するケースが相次いでいることが問題となっています。

 毎年800万トンも海洋に流出しているというプラスチックゴミを少しでも減らそうと、2018年7月にはアメリカ・ワシントン州のシアトルがプラスチック製ストローの使用を禁止したり、スターバックス コーヒーが20年までにプラスチック製ストローを徐々に減らす計画を発表したりしています。ストローは健康な人にとっては不必要なものであることから、「まずは、そのストローを使うのをやめよう」という取り組みですが、ストローの歴史を振り返ると、意外なことにビール醸造の歴史と合流します。

ビールの「苦み」に痛みを抑制する作用も


 ビールの起源は、紀元前4000年以上前とされています。農耕生活が始まって間もないメソポタミア地方でシュメール人が放置していた麦汁に天然の酵母が入り込み、偶然発酵したのが起源といわれているのです。このとき、シュメール人は発酵物を「高貴な液体」「天と地を支配する愛と豊穣と戦いの女神イナンナの飲み物」ととらえ、美しい装飾を施した金属製のツボに入れ、表面に浮かぶドロドロの発酵物の下にあるビールを細長い筒を使って飲んでいたといいます。

 最近、近畿大学がビールの苦み成分が手足の痛みやしびれ、腹痛を抑制することを発見しました。この研究によると、ビールの主要原料であるホップに含まれる苦み成分の中に、幅広い種類の痛みを抑える作用を持つ化学物質が含まれていたということです。

 ホップには、確認されているだけで250種類を超える化学物質が含まれています。そのなかのα酸と呼ばれる化学物質が醸造中に分解してイソα酸になることで水に溶けやすくなり、ホップからビールの中に溶けだして苦みを醸し出します。α酸の配合によってビールの味は大きく変化するため、ビールメーカーは狙った味をつくり出せるようにホップを厳選します。

 ホップの中に含まれている痛みを抑える成分とは、6-プレニルナリンゲニンという化学物質です。もともとは生薬の一種であるマメ科の植物の根、苦参(くじん)で発見された物質です。この物質は、細胞がカルシウムイオンをやり取りするための通路をふさぐ作用を持っています。痛みなどの感覚はイオンが神経細胞を出入りすることによって患部から脳へ伝えられるため、イオンの出入りをブロックすることによって痛みの情報が脳に伝わるのが回避されます。

6-プレニルナリンゲニンの構造式
 その後の研究で、6-プレニルナリンゲニンは一般的な神経障害による痛みだけでなく、内臓性の腹痛、糖尿病やがんの治療に伴う痛み、従来の鎮痛剤が効かない種類の痛みにも効果があることが確認され、医薬品としての開発が期待されています。
『食べ物はこうして血となり肉となる~ちょっと意外な体の中の食物動態~』

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ビールに医薬品のような作用も…週に3缶以下でがん発生率低下のページです。ビジネスジャーナルは、連載、がんビールホップ医薬品の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!

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