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津田建二「IT/エレクトロニクス業界の動向」

半導体市場、「ハイパーサイクル」など存在しなかった…メモリ「バブル」終焉の後先

文=津田建二/国際技術ジャーナリスト
半導体市場、「ハイパーサイクル」など存在しなかった…メモリ「バブル」終焉の後先の画像1「Gettyimages」より

 2016年下半期から半導体市場が前年同月比でプラス成長を続け、これまでの「シリコンサイクル」から「ハイパーサイクル」という言葉が生まれ、絶好調が続いているかのような様相を見せてきた。ところが、半導体チップをつくるための機械(装置)産業に、ここにきて急ブレーキがかかっている。

 その要因はどこにあるか。国内のメディアはこぞって「半導体産業は好景気」とあおってきたが、実は「ハイパーサイクル」などはなかった。日本の半導体市場が好調なのは、あくまでも半導体をつくるための製造装置産業だった。それも主に、3次元NANDフラッシュメモリという製品をつくるために新しく開発しなければならない製造工程が必要であり、その工程で使う製造装置の需要が高くなっていただけの話である。牽引役はIoTでもAIでも仮想通貨でもない。半導体産業は、メモリの単価が大きく値上がりしたことによってメモリメーカーが潤ってきただけにすぎない。

メモリの販売額は61.5%の伸び

 2017年の世界半導体産業の売上高を見てみよう。表1に、世界半導体市場統計(WSTS)がまとめた同年の実績を示した。製品のなかで売上金額と伸び率が極めて高い製品がメモリであることがわかる。

半導体市場、「ハイパーサイクル」など存在しなかった…メモリ「バブル」終焉の後先の画像2

 同年の年成長率を見ると、全半導体の伸びが21.6%であり、全ICの伸びは24.0%となっている。メモリの項目を見ると、なんと61.5%増と驚異的な伸びを示した。メモリの売り上げ規模は1239億7400万ドル、半導体全体4122億2100万ドルの30%にも及ぶ。

 メモリの次に大きな成長率を示したのは、センサの16.2%成長と全半導体の伸びに及ばない。しかもセンサの売上規模はわずか125億7100万ドルと、メモリの10分の1しかない。メモリの次に規模の大きな半導体はロジックで、1022億900万ドルとメモリよりも小さく、しかも伸び率も11.7%にとどまっている。いかにメモリが強い影響を持っているのかがわかるだろう。

半導体市場、「ハイパーサイクル」など存在しなかった…メモリ「バブル」終焉の後先の画像3

メモリメーカーが大きく成長

 メモリが大きく伸びた様子は、世界半導体のランキングを見てもわかる(表2)。インテルを抜いてトップに立ったのは韓国サムスンであり、その伸びは52.6%と極めて大きい。このサムスンはファウンドリビジネスも担っており、メモリ以外の半導体も少し持っている。メモリメーカーの第2位、第3位のSKハイニックスとマイクロンはメモリしかつくっていないため、伸びはもっと顕著だ。それぞれ79%増、78.1%増と大きく伸ばし、上位に食い込むようになった。

 表2を見ている限り、メモリメーカーの売上が大きく成長し、その結果、半導体全体が大きく成長した、といえる。メモリ以外の半導体の成長はせいぜい10%前後。第2位に落ちたインテルは6.7%しか伸びていないが、パソコン用CPUに集中してきたインテルにとってこれでも健闘した部類に入る。第10位に入ったNXPはマイナス成長という結果だ。このメモリと非メモリの差は何か。

津田建二/国際技術ジャーナリスト、「News & Chips」編集長

津田建二/国際技術ジャーナリスト、「News & Chips」編集長

国内半導体メーカーを経て、日経マグロウヒル(現日経BP)、リードビジネスインフォメーションと技術ジャーナリストを30数年経験。その間、Nikkei Electronics Asia、Microprocessor Reportなど英文誌にも執筆。リードでSemiconductor International日本版、Design News Japanなどを創刊。海外の視点で日本を見る仕事を主体に活動。
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Twitter:@kenjitsuda2007

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