「日産の金は俺の金」…ゴーン氏、異常な強欲さの裏に「例外者的な特権意識」と幼少期の屈辱
日産自動車のカルロス・ゴーン容疑者が自身の報酬を約50億円過少に申告したとして、金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)容疑で逮捕された。この逮捕を受けて記者会見した日産の西川廣人社長は、社内調査の結果、3点の重大な不正行為が判明したと述べた。報酬を減額して記載しただけでなく、私的な目的での資金流用と経費の不正支出もあったという。
事実とすれば、ゆゆしきことである。すでに莫大な財産を築き、経営者として高額の報酬を得ていたにもかかわらず、なぜゴーン氏はこれほどまで金に執着したのか? その理由を分析すると、次の3つの要因が浮かび上がる。
( 1 )「コストカッター」
( 2 )特権意識
( 3 )<例外者>
「コストカッター」
2万人以上のグループ従業員のリストラや5工場の閉鎖などによって日産のV字回復を成し遂げたゴーン容疑者は、「コストカッター」として名高い。その負の側面があらゆる場面で顔をのぞかせているように見える。
まず、自らの報酬を過少に申告したのは、支払う税金をできるだけ少なくしたいという思惑があったからではないか。また、海外の子会社にブラジルやレバノンなどで高級住宅を購入させ、ゴーン容疑者が無償で提供を受けていた疑いもあるらしい。これは、自分が利用する住宅であっても、自分の財布からは一銭も出したくないからで、「コストカッター」の面目躍如といえる。
私生活においても「コストカッター」ぶりを発揮している。ゴーン容疑者は前妻との離婚手続きの際に「お前に与える財産はない」と主張し、財産分与の権利を放棄するよう前妻に迫ったと今年5月に「週刊文春」(文藝春秋/5月24日号)で報じられている。そのうえ、離婚訴訟費用まで日産に出させたという報道もある(同誌11月29日号)。事実とすれば、離婚はしたいが、そのコストを自分で負担するのは嫌だったのだろう。
ゴーン容疑者がカットしたかったのは金だけではないようだ。超せっかちで、社内食堂でものすごいスピードで食事を取る姿が社員に目撃されている。また、ゴルフも「時間がかかるから」という理由でやらなかったらしい。いずれも、時間をできるだけカットしたいからにほかならない。
つまり、ゴーン容疑者は、金にせよ時間にせよ、自分がコストとみなし、無駄と判断したものは徹底的にカットする。良くいえば合理的で、こういう人物が日産の再建のためには必要だったのかもしれない。だが、その反面、「非情」「がめつい」などと批判されても当然といえるほどの「コストカッター」ぶりである。今回告発された一連の不正は、こうした負の側面によると考えられる。
特権意識
ゴーン容疑者は、「俺は経営危機に陥った日産を立て直した功労者なのだから、特別扱いされて当然」と特権意識を抱き、「少々のことは許されるはず」と思い込んでいた可能性が高い。もしかしたら、「俺が改革しなければ、日産はつぶれてもおかしくなかった。だから、俺のおかげで立ち直った日産が現在稼いでいる金をどう使おうと俺の勝手」とさえ思っていたかもしれない。
こうした特権意識は、ゴーン容疑者が日産で長年トップの座にあり、彼1人に権限が集中しすぎたことによって助長されたはずだ。また、「カリスマ経営者」として日本だけでなく世界中で称賛されたことも、彼の特権意識を強めたに違いない。