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平成の「ゆとり教育」、実は成功していた?尚早な「脱ゆとり」への転換こそ失敗だった?

文=真島加代/清談社
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 近年では、主にスポーツ界において、16年のリオ・デ・ジャネイロオリンピックのメダリストが1987~2004年生まれ、つまりゆとり教育を受けた世代が多いという好意的な意見も出てきている。ゆとり教育によって時間的な余裕が生まれ、もともと素質があった彼らは練習に時間を費やし長所を伸ばすことができた、と考えられているようだ。

 そして、おおた氏は「テストの点数が多少下がったからといって、失敗だと決めつけるべきではない」と指摘する。

「確かに、ゆとり教育が何を目的としていてどのようなものなのかをあらかじめ明示せず、世間に対して『基礎的な勉強をしなくていいんだ』という誤解を与えてしまったことなど、広報的な意味での失敗はあります。ゆとり教育は、目先のテストの点数を上げる『詰め込み教育』から『点数にとらわれず、大人になってから本当に役立つ力を身につける教育』に変えるのが真の目的。その成果が見えてくるのは、彼らが大人になってからなんです」(同)

 また、改訂当時はゆとり教育の思惑通りに授業を進められる教員の能力や環境が不足していたという問題はあったものの、長く続けていれば現場のスキルを上げることも可能だったはずだ。そう考えると、10年もたたずに「脱ゆとり」へ方向転換してしまったのは時期尚早だったのかもしれない。

「教育の成果が表れるには数十年という時間が必要です。本当に価値がある教育は、その教育の成果が表れて、時間的にも空間的にも広い視野を持つことができるようになるまで、その良さが理解されないものです。それにもかかわらず、テストの点数や一流大学の合格者数など『今すぐに効果が得られる教育』が求められてしまうという、日本全体の根深い問題があるのは確かですね」(同)

超進学校に「裁縫」の授業がある理由

 おおた氏は著書『名門校の「人生を学ぶ」授業』(SBクリエイティブ)を執筆するなかで、灘高校や麻布高校など全国屈指の進学校で行われている授業に触れる機会があったという。その授業内容は「裁縫」や「水田稲作学習」など、一見受験と関係ないように思えるユニークなものばかりだったそうだ。

『名門校の「人生を学ぶ」授業』 16校の白熱授業を実況中継! 名門校と呼ばれるほどの進学校ほど、実は受験勉強以外により大きな時間を割いている。しかも、それは流行りのプログラミング教育でも、ネイティブに迫る英語でもなく、「裁縫」や「なわとび」など、一見、大学受験には関係なさそうな授業である。果たしてそれはなんのためにあるのか? 名門校で日々実践されている「どんな時代になっても生きていけるための力」の育て方に迫る。 amazon_associate_logo.jpg

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