榎本博明「人と社会の役に立つ心理学」

大事な我が子を将来「引きこもり」にさせないための教育方法…他人事ではない時代に

人とかかわる力が自然に身につかない時代になった

 
 人間関係力など自然に身につくというのが、時代遅れの思い込みにすぎないことに気づくこと。子育てをしている人たちには、そのことを強調したい。

 私がカウンセリングをしてきた人間関係が苦手という学生たちも、大きくなって突然人づきあいに苦痛を感じるようになったわけではない。子どもの頃からなんとなく人づきあいがスムーズにいかない感じがあるのがふつうである。そのような人間関係に対する苦手意識を10代後半や20代になってから克服するのは非常に難しい。うまく克服できない場合、生涯にわたって人間関係に苦しむことになる。

 ゆえに、幼い頃から人間関係の世界に慣れさせることが必要であり、それが自然に行われないため、親が意識してわが子を人間関係の世界に馴染ませる努力をする必要があるのである。

 早期教育というと学習塾や習い事を思い浮かべるのがふつうだろうが、幼児期や児童期には人間の心理発達にとってもっと大事なことがあることを忘れてはならない。人間生活の土台となる人とかかわる力をその時期に身につけておかないと、将来において致命的なことになりかねない。

 子育てをしている最中の人には、そういう時代になったのだということを肝に銘じておいていただきたい。
(文=榎本博明/MP人間科学研究所代表、心理学博士)

榎本博明/心理学博士、MP人間科学研究所代表

心理学博士。1955年東京生まれ。東京大学教育心理学科卒。東芝市場調査課勤務の後、東京都立大学大学院心理学専攻博士課程中退。川村短期大学講師、カリフォルニア大学客員教授、大阪大学大学院助教授等を経て、MP人間科学研究所代表。心理学をベースにした執筆、企業研修・教育講演等を行う。著書に『「やりたい仕事」病』『薄っぺらいのに自信満々な人』『かかわると面倒くさい人』『伸びる子どもは○○がすごい』『読書をする子は○○がすごい』『勉強できる子は○○がすごい』(以上、日経プレミアシリーズ)、『モチベーションの新法則』『仕事で使える心理学』『心を強くするストレスマネジメント』(以上、日経文庫)、『他人を引きずりおろすのに必死な人』(SB新書)、『「上から目線」の構造<完全版>』(日経ビジネス人文庫)、『「おもてなし」という残酷社会』『思考停止という病理』(平凡社新書)など多数。
MP人間科学研究所 E-mail:mphuman@ae.auone-net.jp

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