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中西貴之「化学に恋するアピシウス」

ランチに海鮮丼、アルツハイマー病抑制や認知機能改善に効果か

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海鮮丼(撮影=やましな@projectNIRU)

 忙しいビジネスパーソンは安・近・短でランチを済ませがちですが、そんなときに重宝するのが丼ものですね。それでも、やはり栄養には気を付けたいもの。丼ものにもいろいろありますが、今回は栄養豊富な海鮮丼に注目したいと思います。

 新鮮な魚介類が載った海鮮丼は海に囲まれた日本ならではの料理で、日本中至るところで、その地の鮮魚を使った地方色豊かな海鮮丼を楽しむことができます。魚とごはんといえば代表的な料理は握り寿司ですが、職人が食材を厳選し、腕によりをかけて握った寿司とは対照的に、海鮮丼は酢を加えない白飯を使い、魚もぶつ切りでダイナミックに載せられています。

 これは、第二次大戦後に北海道や東北地方の大衆食堂が、寿司よりも手軽に魚とごはんが同時においしく食べられるように、と考え出した料理だといわれています。発祥は、秋田県男鹿半島説や石川県金沢市説、江戸前説など、複数箇所が我こそ発祥と名乗りを上げていますが、明確な発祥の地はわかっていません。

 赤身、白身、卵焼きetc.と、色どりもとても豊かな海鮮丼ですが、赤い色合いの海鮮丼は特に健康に良いことが、いろいろな科学的研究から明らかになっています。海鮮丼における赤い食材といえば、サケ、イクラ、エビ、カニなどですが、これらの海産物には共通成分として「アスタキサンチン」が含まれています。

アスタキサンチンの構造式

 アスタキサンチンは赤色色素の一種で、抗酸化作用は青魚に多く含まれる抗酸化物質「ビタミンE」の1000倍。そのほか、紫外線からの保護作用、悪玉コレステロール(LDL)の抑制、動脈硬化の改善、糖尿病予防などの作用も期待できることがわかっています。

 赤い食品といえばニンジンやトマトが思い出されますが、これら野菜の赤色色素はβカロテン、あるいはリコピンです。この両者もアスタキサンチン同様に抗酸化作用を持ち、生活習慣病の予防に効果があるといわれていますが、アスタキサンチンの作用はこれらの抗酸化力を大きく上回ります。まるで、海から私たちへの贈り物ともいえる天然化学物質です。

 アスタキサンチンの1日必要量は、多くの文献で6mgが目安とされています。サケの切り身1切れにおよそ1mg、大きめのエビの身1匹分に1mg、イクラはスプーン1盛に0.5mg程度含まれるので、海鮮丼を1杯食べれば、それだけで1日の必要量の多くを補給できます。

アスタキサンチン摂取で認知機能低下が改善も

 このような若さを保つ作用のほかに、筑波大学の最近の研究でアスタキサンチンの新たな作用が発見され、注目を集めています。それは、脳の神経細胞の増殖を促し、認知機能低下を改善するというものです。

 読者であるビジネスパーソンの多くは、日頃の運動不足、睡眠不足、頻繁な飲み会が原因の偏食、などを感じておられるのではないでしょうか。これらの行為は、いずれも学習や記憶を司る脳の海馬と呼ばれる領域の機能低下を引き起こし、将来的には認知機能の低下や神経性疾患につながることが、多くの研究でわかっています。現代社会ではライフスタイルの改善による健康増進が推奨されており、一駅歩くなどの日常的な運動であっても十分な効果があるとされています。

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