ビジネスジャーナル > 社会ニュース > 関電、原発マネー受領も「違法ではない」  > 3ページ目
NEW

関電、1億8000万円受領し原発工事発注を「違法ではない」と強弁…贈収賄罪成立の可能性は?

文=編集部、協力=山岸純/弁護士法人ALG&Associates執行役員・弁護士
【この記事のキーワード】, ,

山岸弁護士の解説

 今回の件は、“なんだかよくわからないけど、間違いなくダークなおカネ”を受け取ったほうが「公務員」ではないので、元助役にも関電の役員にも、刑法上の贈賄罪(ワイロを渡すほう)や収賄罪(ワイロをもらうほう)は成立しません。

 もっとも、元助役が地元建設会社から金銭を受け取った時点で、それが「職務に関し受け取った金銭」と考えられるなら、たとえそれをそのまま関電の役員に流したとしても、元助役に収賄罪が成立する可能性があります。地元建設会社には贈賄罪が成立するでしょう。

 ところで、会社法967条は、「(取締役などが)その職務に関し、不正の請託を受けて、財産上の利益を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、5年以下の懲役又は500万円以下の罰金に処する」と規定しております(取締役などの贈収賄罪)。

 これは、会社という組織が、社会に大きな影響を与える可能性がある存在であることから、取締役などの職務の公正さを維持するために設けられた規定です。

 ここで、「不正の請託」とは、その担当している職務に関して違法に一定の行為を行う・行わないことを意味しています。

 要するに、取締役などが第三者からカネをもらって、その会社での担当業務を行うようになると、「カネをもらわないと仕事をしない」「その会社への国民の信頼がゆらぐ」などのデメリットが発生してしまうので、このような行為を取り締まることとしたわけです。

 今回、関電の取締役などが元助役を通じ、関電高浜原発が立地する福井県高浜町の地元建設業者などから “なんだかよくわからないけど、間違いなくダークなおカネ”をもらっていたわけですが、「関電の取締役」が「関電高浜原発」に関する職務を行っているなかで、「新しい工事が欲しい」「原発のメンテナンスを発注してほしい」などと依頼を受けてこの“ダークなおカネ”をもらっているのであれば、「取締役などの贈収賄罪」が成立する可能性は極めて高いと考えられます。

 そして、この場合、“ダークなおカネ”を渡したほう(地元建設業者、元助役)も「3年以下の懲役又は300万円以下の罰金」が科されます。

 もっとも、会社の取締役などの場合、「取締役などの贈収賄罪」よりも罪が重い「特別背任罪(自分の利益などを図ったり、会社に損害を与える目的で、任務に背く行為をして、会社に損害を与える罪。会社法960条)」で処罰されることのほうが多いようです(こちらは10年以下の懲役又は1000万円以下の罰金)。

 「原子力発電所」という国家政策・国家プロジェクトに関してこのような犯罪が敢行されている自体トンデモナイことですが、とにかく、これらの犯罪(と思しき行為)を暴いた税務署などの努力に感謝です。

(文=編集部、協力=山岸純/弁護士法人ALG&Associates執行役員・弁護士

関電、1億8000万円受領し原発工事発注を「違法ではない」と強弁…贈収賄罪成立の可能性は?の画像2

●山岸純/弁護士法人ALG&Associates執行役員・弁護士

 時事ネタや芸能ニュースを、法律という観点からわかりやすく解説することを目指し、日々研鑽を重ね、各種メディアで活躍している。弁護士法人ALG&Associates執行役員として法律事務所を経営し、また同法人によせられる離婚相談、相続問題、刑事問題を取り扱う民事・刑事事業部長として後輩の指導・育成も行っている。芸能などのニュースに関して、テレビやラジオなど各種メディアに多数出演。また、企業向け労務問題、民泊ビジネス、PTA関連問題など、注目度の高いセミナーにて講師を務める。労務関連の書籍では、寄せられる質問に対する回答・解説を定期的に行っている。弁護士としては、企業法務、交通事故問題、離婚、相続、刑事弁護など幅広い分野を扱い、特に訴訟等の紛争業務にて培った経験を離婚、相続、刑事弁護など幅広い分野を扱い、特に訴訟等の紛争業務にて培った経験をさまざまな方面で活かしている。

関電、1億8000万円受領し原発工事発注を「違法ではない」と強弁…贈収賄罪成立の可能性は?のページです。ビジネスジャーナルは、社会、, , の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!