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吉澤恵理「薬剤師の視点で社会を斬る」

インフルエンザ治療薬「ゾフルーザ」、医師の間から処方に警鐘も…耐性ウイルス発生の可能性

文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト

「1回の服用でよいということは半減期が長く、体の中に薬が長くとどまるわけです。重大な副作用が起きたときに体から薬がなかなか出て行かなければ、副作用も長く続くということです。ゾフルーザは、効果においてはタミフルと引き分け。しかし、タミフルの半減期に比べてゾフルーザの半減期は長い。それなのになぜゾフルーザを使うのでしょうか。“まともな医者”なら使わないはずです」(岩田教授)

 半減期とは、体の中に入った薬の全体量が半分になるまでの時間をいう。タミフルの半減期が6~10時間なのに対して、ゾフルーザの半減期は77.6~114時間である。ゾフルーザは一度服用すると、半減するのに4日前後もかかるのだ。すなわち、ゾフルーザで副作用が出れば確実に4日前後もそれが続くことになる。

「タミフルは開発から20年が経過し、多くの臨床データがあり、副作用についても十分にわかっています。しかし、ゾフルーザは十分な臨床データがありません。その上、ゾフルーザは耐性ウィルスが出る可能性が高いといえます。そして、実際に耐性ウィルスが発生した場合、何が起こるかというのは、臨床データが不十分だからわからないのです」(同)

 ゾフルーザ服用による耐性ウィルスの出現が今後、どのような影響を及ぼすのかわからないにもかかわらず、多くの患者が服用している現状には、不安を感じずにはいられない。今後、有益な臨床情報が集まり、ゾフルーザの有効性、副作用について詳しく解明されることを望む。

インフルエンザ治療薬の適正使用とは

 筆者は過去、何度かインフルエンザに罹患したことがあるが、2001年のタミフル発売以前はインフルエンザ治療薬はなかった。発熱に対しては解熱剤といったように、一つひとつの症状を抑える“対症療法”を行うしかなかった。インフルエンザウィルスが体の中に入れば、体の免疫機能が働き、最終的に抗体ができて症状も終息する。抗体ができるまでの免疫反応の過程で、悪寒や発熱、体の痛みなどが起きるが、インフルエンザ治療薬を使用しなくとも5日程度で快方に向かう。これに対してインフルエンザ治療薬を使用すれば1~1.5日早く快方に向かい、体力のない幼児や高齢者に関しては重症化を防ぐ効果がある。

 インフルエンザでも症状が非常に軽いケースもあるが、そのような時はインフルエンザ治療薬の服用の必要性は低いといえる。しかし、実際の医療現場では、インフルエンザの検査が陽性であれば必ずインフルエンザ治療薬を処方する、といった医師が多くいる。これは見直すべきであると強く思う。本来なら、医療現場からインフルエンザ治療薬の適正使用について論じられるべきだ。軽い症状でも服用する患者が多すぎて、治療薬の供給が間に合わず、本当に必要な重症化が予想される患者が服用できないという事態が起こらないように、医師にも患者にもインフルエンザに関して正しい知識を持っていただきたい。
(文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト)

吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト

吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト

1969年12月25日福島県生まれ。1992年東北薬科大学卒業。福島県立医科大学薬理学講座助手、福島県公立岩瀬病院薬剤部、医療法人寿会で病院勤務後、現在は薬物乱用防止の啓蒙活動、心の問題などにも取り組み、コラム執筆のほか、講演、セミナーなども行っている。

吉澤恵理公式ブログ

Instagram:@medical_journalist_erie

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