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徴用工問題:個人の慰謝料請求権、韓国政府に補償義務があることを韓国政府が隠蔽

文=姜英順/ジャーナリスト
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韓国内でも反発の声

 日本側でも、超党派でつくる日韓議員連盟の河村建夫幹事長が、文議長の提案について「解決策はこれだけだ」と評価しているという。さらに河村氏は安倍晋三首相に、「文議長がいろいろ努力している。韓国側も『日韓請求権協定の根幹を崩さない』と言っている」と、この法案の趣旨を説明したところ、安倍首相は「きちんと日韓の間の約束を守ったものなら進めばいい」と静観する姿勢を示したと報じられている。

 日本政府は、元徴用工らの請求権は日韓請求権協定で「最終的に解決された」との立場であり、韓国側で問題解決を図るべきとの考えを崩していない。そのため、文議長の提案に日本側が表立って協力することはないだろう。

 日本経済団体連合会(経団連)の中西宏明会長も25日の記者会見で、文議長の提案について、「経済界が直接、お金を使うことは一切ない」と語り、日本の経済界としてはこの問題に立ち入らない姿勢を示した。

 さらに、この法案は、韓国の元徴用工支援者側の反発も予想される。というのも、支援者たちは日本政府による謝罪と賠償を最重視しているため、単に慰謝料が支払われるだけでは解決に至らないとみられるからだ。

 しかも、韓国内の一部の弁護士からは、文議長が提案する基金による慰謝料支払いによって元徴用工問題を解決するならば、日本の政府と企業に対する個人の請求権が消滅することを認めてしまうとの懸念が指摘されている。

 日韓請求権協定では、韓国が日本から借款を受けることで請求権をすべて放棄し、歴史問題を包括的に解決しようとした。しかし後年、国家が個人請求権を消滅させることはできないとの見解では、両国が一致している。ただし、この個人の請求権を韓国政府が補償するというのが、この協定の肝となる部分だ。韓国政府は、その補償を一切行わず、国民にも知らせていないため、問題がこじれる原因となっている。

 だが、法律で基金の設立を認可し、「和解・癒やし財団」の残高をその基金に組み入れるならば、日韓合意によって慰安婦問題が“最終的かつ不可逆的に解決”したことを国内で認めたことになるとの指摘があがっているのだ。韓国内では、朴槿恵政府時代に締結された日韓合意を無効であるとして撤回するように動いている。そのため、残高を基金に組み入れることには強い反発が出るだろう。

 韓国のネット上でも、「日本の責任ある反省と謝罪を受けないといけないのに、なぜ被害者に慰謝料を支払えば解決すると思っているのか」「文大統領の提案は売国行為だ」「被害者への心からの謝罪と歴史認識のあらためがなければ真の解決はない」といった批判的な声が殺到している。

 日韓どちらの国でも、国民からは好意的に受け入れられていない様子の文議長の提案だが、“政治的に”進められていくのか、注意深く見守っていきたい。

(文=姜英順/ジャーナリスト)

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