自民党が7日に開いた新型コロナウイルス対策本部などの合同会議(写真上)に、多数の議員が詰めかけた。この模様は複数のメディアで報じられ、会議室に隙間なく着席する自民党関係者らの姿に、感染リスクの高い密閉、密集、密接の「3密」状態だったのではないかとの疑念が高まっていた。情報番組『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日系)でもその模様を報じたところ、自民党参議院議員の和田政宗氏(宮城県選挙区)が8日、Twitterに以下のような投稿をした。
テレビ朝日「モーニングショー」でまた事実誤認の放送。
— 和田 政宗 (@wadamasamune) May 7, 2020
昨日の自民党の会議に多くの議員が出席し3密では?との映像の中で、議員からも「ちょっとこれ3密だよ」と声が挙がったと、この音声込みで紹介したが、これは私の前に座っていた議員が、会議室内で密集していたメディア記者達に対し発言したもの
「テレビ朝日『モーニングショー』でまた事実誤認の放送。
昨日の自民党の会議に多くの議員が出席し3密では?との映像の中で、議員からも『ちょっとこれ3密だよ』と声が挙がったと、この音声込みで紹介したが、これは私の前に座っていた議員が、会議室内で密集していたメディア記者達に対し発言したもの」(原文ママ)
平常時に比べれば人数は減ったが、こうした与党の会議などの重要取材案件には今もなお新聞、テレビ各社の記者が大勢おしよせている。だが、仮に和田氏の指摘する通り、議員の発言が密集して取材を行うマスコミに向けられたものだったとしても、議員が間隔も開けずに着席し、長時間室内で続けられた会議が『3密』だったかどうかの懸念の払しょくにはならないのではないか。
実際、自民党の会議はすし詰め状態だった
ちなみに、産経新聞インターネット版は7日午後10時44分に配信した記事『自民が「3密」状態でコロナ対策協議 懸念の声も』で、以下のようにこの会議を報じている。
「党関係者によると、会議は『3密』を避けるため、通常使用している党本部の会議室より広い場所に移して開催した。間隔を空けて着席するよう指示があったが、想定以上の出席者で会場は満席となった。約2時間を見込んでいた会合は、発言者が相次いだため4時間以上も続いた。
途中退席したある閣僚経験者は『後ろの方は、すし詰め状態で明らかに『3密』だった。1人でも感染者が出たら全員自宅待機になるのではないか』と自嘲気味に語った」
おおむね産経新聞もモーニングショーと同じような論調だ。また毎日新聞インターネット版が8日に公開した記事『「3密どころか酸欠」自民のコロナ対策会議 議員殺到 席詰めて白熱4時間超』でも写真付きで、「立ち見が出るほどの満員状態となり、期せずして『3密』に近い状態となった」と会場の様子を伝えている。
産経の記事の「閣僚経験者」の発言も、和田氏が指摘するようにマスコミに向けられたものだったのだろうか。そもそも、なぜこの状況下で実際に議員を大量に集めて会議を行う必要があるのか。オンライン会議ではダメだったのか。自民党議員秘書は次のように話す。
「とにかく『今は有事』ということもあって、どの先生も存在感を示したがっているんです。オンライン会議でマスコミに報じられないような場で、発言しても目立たないでしょう?秘書仲間もあの会議は心配していました。議員もマスコミも大量に出席し、すし詰め状態でした。だから、どちらかがどうのということではないでしょう。
自民党内の会議は昔から、『誰が出席し、どこに座り、何をしゃべったのか』をみんなで把握することで、各派閥の勢力状況や党内のパワーバランスを確認するための場でもあるんです。だから、直接議員が集まる必要があります。
当然、オンラインですべてやるにはセキュリティーの問題なども出てきます。ただ、秘密保持に関わるような案件を話し合うクローズド(取材・傍聴不可)の会議であれば、そうした指摘もあるでしょうが、今回のような会議であれば、オンラインでも良かったのではないでしょうか。我々としては、有事だからこそ先生たちの間でコロナ感染症が広まらないか心配です」
「隗より始めよ」ということわざにある通り、まずは国会が一連の感染症対策での範を示したほうがいいのではないか。
(文=編集部)