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木下隆之「クルマ激辛定食」

レクサス「LC」、なぜコンバーチブル登場まで3年もかかった?特殊な開発手法で美しさ実現

文=木下隆之/レーシングドライバー
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レクサス「LC」コンバーチブルモデル

 レクサスが誇る最高級フラッグシップモデル「LC500」に、コンバーチブルモデルが加わった。LCクーペがデビューしたのが2017年。その頃すでにコンバーチブルの開発はスタートしていた。あれから3年も過ぎてしまった。LCデビュー当初からコンバーチブルの登場が期待されていただけに、我々ユーザーは大いに待たされた。旬を過ぎてしまった感は否めないが、まずはそのスタイリッシュなモデルの誕生を祝おうと思う。

 LCコンバーチブルの魅力を語り始めたら、とてもこの原稿内で終えることは難しい。

 手垢のついた言葉ながら、一言で表現するならば「カッコいい」となるだろう。スタイリングは多分に好みの問題だとはいえ、破綻のないフォルムには違和感がない。好感が持てるのだ。クーペの持つイメージを崩さずに、ここまでスタシリッシュに整えることは決してたやすくない。開発陣の熱い思いとこだわりがあったからなのだろうと想像する。クーペボディのコンバーチブル化には、特殊な開発手法が採用された。

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 ルーフを切り取り、布製の幌を背後に格納するだけならば、とりあえず形だけのオープンモデルは完成する。だが、クルマとしての基本性能を損なわず、しかもスタイリッシュに仕上げるのは簡単ではない。

 ルーフというボディ剛性の約50%を担う構造物を失うことで、走りは明らかに鈍化する。後から補強するにしても、鉄のパイプをジャングルジムのように張り巡らせなければならず、結果的に鈍重なクルマに成り下がる。

 幌の収納も課題だ。器用に折り畳んだとしても、デザイナーが求める姿にはならない。背中に昆布のような隆起を背負うことになり、イメージスケッチが描くようなスタイルにはならない。後から取ってつけたような、無骨なコンバーチブルになってしまう。

 それを嫌ったレクサスは、クーペを開発する段階からコンバーチブル化を想定したのだ。つまり、ルーフという大切な構造材を失っても最低レベルのボディ剛性を確保できるように、あらかじめ構造を強化したのである。結果的にクーペは驚くほど強固なボディを得ることができた。

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 ルーフの格納にも準備があった。ルーフ格納を電動化するためにはモーターや油圧シリンダー等のスペースが必要になる。そのために、例えばあらかじめ給油パイプの位置をずらすなどして空間を確保していたのだ。だからコンバーチブルになっても、背後に不自然な隆起もなければ突起もない。フロントから流れるような美しいフォルムが実現したのである。

 実はこのような手法は、海外では珍しくはない。スボーツカーの車形としてクーペとコンバーチブルが求められる欧米では、同時開発が常識でもある。だからクーペとコンバーチブルがほぼ同時に発表される。

 だが、日本でその手法は珍しい。だったらなぜLCはクーペとコンバーチブルを同時デビューさせなかったのかという疑問は残るものの、ともあれ、美しいコンバーチブルの誕生を祝おうと思う。
(文=木下隆之/レーシングドライバー)

●木下隆之
プロレーシングドライバー、レーシングチームプリンシパル、クリエイティブディレクター、文筆業、自動車評論家、日本カーオブザイヤー選考委員、日本ボートオブザイヤー選考委員、日本自動車ジャーナリスト協会会員 「木下隆之のクルマ三昧」「木下隆之の試乗スケッチ」(いずれも産経新聞社)、「木下隆之のクルマ・スキ・トモニ」(TOYOTA GAZOO RACING)、「木下隆之のR’s百景」「木下隆之のハビタブルゾーン」(いずれも交通タイムス社)、「木下隆之の人生いつでもREDZONE」(ネコ・パブリッシング)など連載を多数抱える。

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