原因不明の「疲れやすい、食欲不振、不眠」は副腎疲労?簡単にできるコロナ禍のストレス対策
コロナ禍にあって、「疲れやすい」「頭痛や腹痛」「食欲不振」「不眠」などの不定愁訴で医療機関を受診する人が増えている。不定愁訴とは、検査をしても異常がなく、原因がはっきりしない症状をいう。不定愁訴に悩む患者には、不眠なら睡眠導入剤、痛みには鎮痛剤と言った対症療法が行われる。しかし、対症療法では解決にならないばかりか、症状をごまかしているうちにさらに悪化してしまう可能性もある。
そんな不定愁訴の原因は、実は「副腎疲労」かもしれない。副腎疲労に詳しい東京都江東区のアクアメディカルクリニック院長、寺田武史医師に話を聞いた。
副腎疲労とは
「副腎は左右の腎臓の上にある数センチ程度の小さな臓器です。ストレスなどから体を守るホルモン、コルチゾールをつくり分泌しています。コルチゾールとは、ステロイドで抗炎症作用、抗ストレス作用、抗アレルギー作用などがあり、我々の体の免疫のバランスや血糖値コントロール、タンパク質や脂質の代謝など健康維持に欠かせないホルモンです」
アレルギーや喘息、さまざまな疾患の治療に使用されるステロイドと同じコルチゾールは本来、我々の体の中でつくられるホルモンである。健康な状態ではコルチゾールには日内変動といって、1日の中で分泌される量が変化していく。
「本来は、コルチゾールの分泌は起床時が一番高く、日中に体を活発な状態にします。そして夜に向かって徐々に減少し、就寝時にはもっとも少なく体が休む状態となり、自然な眠りにつくことができます」
しかし、ストレスや疲労があると、コルチゾールの分泌に影響を与え、正常な日内変動のリズムを崩してしまう。
「コルチゾールは、生体の一日の活動リズムを整えているともいわれ、ストレスなどで活動リズムが崩れてコルチゾールの分泌が慢性的に高くなると副腎が疲労して、不眠や疲労など体の不調として表れます。言うなればコルチゾールがストレスを引き受けてくれています。しかし、毎日の繰り返しで強いストレスがものすごくかかってくると、コルチゾールがどんどん分泌されて副腎は常に戦っている状態になってしまう。そういった状態が続けば、副腎が疲労し、コルチゾールが十分に分泌されなくなってしまい、体のバランスを保つことが難しくなり、不定愁訴が起きるというわけです」
寺田氏のもとで副腎疲労を治療した患者は、副腎疲労を起こさない生活を学び、健康を取り戻している。
低血糖が副腎疲労を招く
寺田氏によると、副腎疲労を招く原因は大きく4つあるという。
(1)低血糖や栄養状態の悪化
「低血糖になると身体はコルチゾールを分泌して血糖値を維持しようとします」
(2)リーキーガット
「ストレス、自分に合わない食べ物、食べ物を消化したときに出る毒素、カンジタ菌を含めた悪玉腸内細菌の異常繁殖、抗生物質などの薬、解毒機能を司る肝臓などの臓器の機能低下などが起きれば腸管にもダメージを与えます。すると体に腸粘膜の細胞と細胞の間をつなげるtight junctionが緩み、直接カラダの中に有害なものが入ってしまい、さまざまな疾患を引き起こします。最近では、うつ、自閉症、ADHDなどの神経性疾患やがんを引き起こすこともわかってきました」
(3)ミトコンドリア機能不全
「赤血球などを除いた、我々の体のほとんどの細胞にはミトコンドリアが存在します。ミコトンドリアはエネルギーをつくり出すため、機能不全が起きると、さまざまな不定愁訴が起きます」
(4)重金属・毒素の蓄積
「重金属や毒素がミトコンドリアの活動を止めてしまいミトコンドリア機能不全を引き起こします」
副腎疲労の予防
「副腎疲労の治療、予防のために真っ先にやるべきは低血糖をつくらないこと。低血糖が起きれば副腎からコルチゾールが出て血糖値を上げます。しかし、コルチゾール低下により血糖コントロールできなくなると、代わりにアドレナリンが分泌され、血糖値をコントロールしようとします。つまり、いつもイライラした状態に陥る傾向になるわけです。低血糖が夜間に起きれば、寝ている間にボクシングをやっているような状態ですから、寝ていられるわけがありませんよね。だから何よりも低血糖を起こさないことが大切です」
低血糖を起こさないようにしなくては次の治療へ進めないというほど、血糖値のコントロールは大切だという。では低血糖の予防とは、具体的にどのように行うのか。
「まずはリブレなどの血糖測定器で血糖値を確かめることです。低血糖を起こしているのであれば、良質な出汁やチキンスープに葛粉を加えたものなどを、食後2時間後に15分おきに一口程度飲む。酵素ドリンクを水で割ったものもいいですね。そうするとコルチゾールの力を借りずに血糖が維持されるんです。また寝る前に蜂蜜をスプーン1杯ほど舐めることもお勧めです。もちろん歯は磨いてください」
不定愁訴を“コロナ禍のストレス”と考えてあきらめる前に、副腎疲労について自身の主治医と相談してみるべきかもしれない。
(文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト)